中国武術

日本人には教えない ~日本人には教えないと言われたら~

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中国武術を練習していると、時々「日本人には教えない」と言われた、という話を聞くことがあります。

日本は八か国連合軍の一員として義和団事変の鎮圧に出兵し、日清戦争では清国に勝利し、日露戦争では南満州の利権と関東州の租借権を得ました。

第一次世界大戦ではドイツと戦い山東半島の権益を手に入れ、その後の満州事変からの一連の流れで東北地方を分離され、また抗日戦争では国土を蹂躙された側からすると日本人に教えない、という考えを中国人老師が持つ気持ちはわからなくはありません。

ただし、抗日意識を持つ中国人から技術と心を学び取った日本人が過去にいたことは事実です。ですから皆さんも抗日意識、日本人に負のイメージを持った中国人老師から「日本人には教えない」と言われても彼らから中国武術を学べる可能性は残されているということです。

今回は、老師から「日本人には教えない」と言われた際の打開策について解説をします。

日本人に教えたがらない理由

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まずは中国人老師が「日本人には教えない」と言う場合の理由について考察します。「日本人に教えない」には以下のような理由が考えられます。

言葉が通じず教えるのが面倒

日本人は中国人にとっては外国人です。中国人のネイティブのように上手に中国語を操れる人は日本人でも多くないと思います。言葉の通じず意思の疎通が図れない外国人を教えるのは中国人にとって骨が折れる仕事です。

身振り手振りで教え、相手が理解したかどうかも本当のところはわからない、とても面倒なことなんです。ですからこの面倒臭さを嫌って日本人に教えるのを疎ましくおもう中国人老師もいると思います。

外国人には理解できないので教えるだけ無駄と思っている

日本人に教えないと老師がいう背景には、日本人を含めた外国人は中華文明を理解できないので中国武術を教えても習得できず教えるだけ無駄だと思ってる可能性があります。

中国武術は中国人が考案した武術であり、それを習得するためには中国人的な考え方、価値観の会得が必須だと思います。その素養がない人間が中国武術の外形を学んでも理解するとは程遠いものができ、ただの真似事あるいは用法だけを習った外面に終わってしまいます。

これでは中国武術を習得したとは言えず、そこまでしか習得できないのであれば残念だが教えること自体が徒労に終わってしまう、と考える中国人老師も中にはいると思われます。

歴史的経緯から日本が嫌い

日本人はというか、日本という国家は日清戦争では清王朝と戦争して勝利した際、賠償金と台湾地区、遼東半島(後に返却)を得、第二次世界大戦に連なる外交と戦争では、中国大陸に兵を送り込んで東北部、華北、華中から華南の広東地区を占領下においた経緯を持ちます。

これらの歴史的経緯から日本国、日本人を嫌う老師もいることは事実です。私の師叔も中国人老師に教えを乞うた際には「日本人には教えない」と言われたと聞いていますし、先輩においても中国人の元空軍の退役将校から「日本人には教えない」と言われたいきさつを聞いたことがります。

これは、当時の惨状を体験した老師たちの世代によるもの、教育によるものなど理由は様々ですが、私の聞いた話で難しい気持ちになったのは、「日本さえ干渉してこなければ、我々は共産党を駆逐でき、台湾島に逃れることにはならなかった」という話です。

この意識が、日本人の学生を敬遠する理由の一つになっていることは事実だと感じます。

周囲から「日本人には教えてほしくない」と言われているから

「日本人には教えない」という理由にあるのが、老師本人は特に日本人に教えないという理由はないけれど、周囲の関係筋から「日本人には教えてくれるな」という懇願がある場合です。

これがあると老師はなかなか日本人に教えるというわけにはいかなくなります。

地域の人間以外には教えないことにしているから

中国の社会には地域のコミュニティーがあり、部外者には教えないという不文律がある地域もあると聞きます。例えば、イスラム教を信奉するコミュニティは回教を基礎とする社会があり、部外者を寄せ付けない閉鎖性があります。

このような場合日本人であろうが漢人であろうが満人であろうが地域の武術を学べない場合があります。

これは日本人が武術を学べないという理由ではありません。ただし長老の同意を得る、ムスリムになり娘婿になる、などの方法でその障壁を通過することは不可能ではありません。

お前には教えない、を日本人には教えないに言い換えているだけ

老師の中には、「お前には教えたくない」という言葉を直接投げかけて角が立ってしまうのを避けるため、「日本人には教えないようにしてるんだ」と言い換えを行う場合があるかもしれません。

「日本人には教えない」と言った老師に学んだ日本人がいる場合、「あなたに対しては教えない」という意味合いがある場合があります。誠意を示して何とかなる場合もありますが、相性や好き嫌いもあるため、「お前には教えない」となった場合は縁がなかったとあきらめざるを得ない場合もあるでしょう。

どうせ帰国すれば練習しないと思っている

中国の老師は、日本人は現地で真面目に一生懸命練習しても、帰国後全く練習しなくなるかもしれない、と思っている方もいるかもしれません。

私の日本人の知り合いも老師から「回日本多練習!(日本に帰ったらたくさん練習しなさい)」「是、謝謝老師(ハイ、ありがとうございました)」と良い返事をして帰国した後、しばらくしたら復習しなくなり、そのうちせっかく習ったものを忘れてしまい、しまいには音信不通になる、というパターンを何度も経験しています。

そのような例が一つでもあると、外国人はここでは真面目そうに習うが帰国すると練習しない、忘れてしまう、と思われてしまいます。

でも現実的には、私も身近に何人も実例があるくらいですから快挙にいとまはありません。とても残念な話ですがこれが現実です。

帰国後に勝手に変に広めらて制御しにくい

老師の中には、日本人が帰国後、勝手に望まない形で教えたものを広めた場合制御がしにくいため日本人を含めた外国人に教えるのをためらう、というパターンがありえます。

中国国内であれば遠方であっても自分の言葉で電話で一喝したりできますが海外に住んでいる学生や外国人に対してその動きを制御するというのはなかなか悩ましい仕事です。

もし自分が教えたものを間違った形で広められたら、または教えてもない内容を曲解して紹介されたら、という懸念が教えるのをためらう理由になります。しかしこれは何も相手が日本人に限ったことではありません。日本人以外の外国人に対しても同様です。

日本人には教えないといわれた時の対策

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ここまで日本人は教えないといわれる理由を解説しましたが、ここからは日本人には教えないといわれた際に講じるべき対策を紹介します。日本人には教えないといわれた際に打つべき対策には以下のようなものがあります。

中国語をビジネスレベルで扱えるようにする

言葉が通じないから教えるのが面倒だという理由で日本人には教えないと言われた場合には、中国語をビジネスレベルで扱えるようにすることでこの問題を解決することができます。

中国武術を動作を伴いながら学ぶ場合、語学力をネイティブレベルにまで高める必要は必ずしもありません。私の経験ではビジネスレベルで十分に学習をすることができます。

会話レベルでしか中国語を使えないのであれば重要な要訣を聞き漏らす可能性がありますが
ビジネスレベルであればまず大丈夫でしょう。ただし、高齢の老師は標準的な普通語や国語を話せない場合が多いため、現地の方言を聞き取れる必要があります。

東北地区、北京では方言によるアクセントの違いはあまりありませんが、河北省、山東省、河南省では相当な訛りがあります。方言を話せる必要はありませんが、最低聞き取れるようにして教えを乞うようにしてみましょう。

思考方法を中国人と同等のものに変える

中国人老師から日本人には教えないと言われた理由が、思考方法が違うことに起因する際には、物事の考え方を日本人のそれから中国人のそれに変えることで解決できます。

日本人の思考と中国人の思考を例に挙げて述べることはここでは行いませんが、つまり中国で暮らして何の違和感もない状態まで頭の中を中国人と同じようにするということです。

そうすれば中国人老師は中国文化たる中国武術を理解できる人材として中国武術を教えるようになります。

情熱と誠意を示し説得を試みる

日本人には教えないと言われた時、その老師の真意がわかりにくい場合にはまずは情熱と誠意を示し説得を試みてみましょう。決定的な理由がある場合にはそれで事情が変わることは難しいですが、そうでなければ情熱と誠意で人間の心は動かされる場合があります。

断れない筋からの口利きを活用する

日本人に教えない、ことを公言している老師でも、その老師が拒否できない権威を持つ人物からの口利きに抵抗はできません。

老師より輩分が高い人物を探し出し懐柔し、そこから説得をさせる、地域の長老から説得を試みる、軍関係者であれば上官、父親代わりの人物、老師の師兄、老師の恩人を懐柔しその筋から話を通してもらえば、「日本人には教えない」という老師から武術を学べる可能性はゼロではありません。

中国人と同じ習慣を身に着ける

日本人には教えないといわれる場合、日本人が中国人の生活習慣を身に着けていないところが理由の場合があります。その場合は中国人と同じ生活習慣を身に着ければ解決できます。

食事の際の箸のおき方、麺の食べ方、おかずの並べ方から、冠婚葬祭の流儀、生活上の禁忌まで日本と中国では異なることがたくさんあります。それらを一つ一つ認識し日本式をやめて中国式に置き換えていくことで中国人と同じ習慣を身に着けることができます。

これは生れもった国籍や民族といった変えることができない要件ではなく、自分がこれまでの育った習慣を新しい習慣に置き換えていく作業ですので後天的なものになります。ですから誰でもこの条件をクリアすることが可能です。

中国人と同じ宗教に改宗する

宗教が異なるから教えない、に日本人が該当する場合も、日本人が教えてもらえないというパターンに該当する場合があります。

老師が帰依する宗教が道教や仏教の場合はレアケースかもしれませんが、イスラム教の場合、イスラムのコミュニティーに入らなければ教えることはかなわない、というケースがあり得ます。この場合は宗教を改宗すれば「教えてもらえない」という問題は一発で解決します。

老師の親戚になる

昔から、中国武術の老師は、一番弟子や優秀な弟子に門派の看板やのれんを継がせるほかに、自身の息子、親族、養子、婿養子や姻族に武術を伝承させました。

理由は、中国人は過去に王朝が交代を繰り返してきた中を生きてきた経験の蓄積から、世の中に信じられるものは家族しかないと思っているからです。

たとえ日本人であっても、老師の娘と結婚し娘婿になったりし老師と親せきになれば、これまで閉じられていたいた門が開ける可能性があります。中国人の老師の家族と親せき関係になり、武術の教えを受けたという実例を私は何件も知っています。

中国人と日本人が結婚することが可能か不可能かというと普通に可能ですのでこれは実現可能な一つの方法です。

日本国籍を放棄し日本人を辞める

「日本人には教えない」ということは、教えない理由が「日本人だから」ということです。ということは日本国籍でなくなれば教えを受けることができるようになるわけです。

日本国籍を放棄し、中華人民共和国の国籍を取得するなり、中華民国の国籍を取得するなり、日本以外の国籍を取得することで日系〇〇人になることができます。

生まれは自分の努力と工夫でどうすることはできませんが、国籍は変更することができますし自分で変更することができます。

私の聞いた話

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私の先輩の筋にあたる日本人も「日本人には教えない」という洗礼を浴びたことがある方が何名かいます。彼らは「情熱と誠意」をもって老師を説得し結果「日本人には教えない」と言った老師から武術を学ぶことに成功しています。

ですから「日本人には教えない」と言われたからと言って簡単にあきらめないことです。情熱と誠意を示せば日本人嫌いな中国人老師から武術を学ぶ機会はゼロではありません。

私の実体験

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私は「日本人には教えない」と言われたことはありません。日本人だから秘方を教えてもらえない部分はあったのかもしれません(自覚症状はないです)。

老師から特別な待遇で教えてもらったわけでもなく、周りの大学生と同じような内容を同じように教えてもらいました。こちらも周りの大学生と同じ素養を持って練習に臨みました。

素養とは言葉や生活習慣、考え方に類するものです。自己紹介をしなければ日本人とわからない、程度まで環境を吸収しておけば、現代の中国、香港、台湾地区においてそこまで「日本人だから」という理由で教えてもらえないという状況はもう発生しないとは考えています。

日本人には教えないといわれた時のまとめ

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今回は「日本人には教えない」と言われた時、について解説しました。中国人が伝承し伝える中国武術を日本国籍保持者が学ぶということは中国人にとっては外国人が学びにくるということです。

特に歴史的経緯から中国人は東洋人に対して負の印象をもっている人物も多いです。その中で中国人老師が「日本人には教えない」という場合、それはどのような理由や経緯があるのか、それして「日本人には教えない」と言われた際の問題の解決方法について解説しました。

「日本人には教えない」、そんなことを言う中国人老師はいるのだろうか、と思うかもしれませんが、私も「日本人には教えない」と言われたことがあるという先輩から話を聞いたこともあります。

でも彼らは「日本人には教えない」と公言した中国人老師から最終的に中国武術を学ぶことに成功しています。

この経緯を鑑みると、やはり「日本人には教えない」と言われた場合でも、問題点を整理し、それを突破する対策を考案しそれを実施することにより「日本人には教えない」と言わしめる老師から中国武術を学ぶことは可能であるという結論を導き出すことができます。

「日本人には教えない」、中国武術ではこのような状況にぶつかることはあります。でもそれは絶対なものではありません。情熱と誠意、そしてそれを突破するための作戦立案と実施によりこの障壁は超えることができます。

そして日本人には教えない中国人老師から中国武術を学ぶことができた時、それが中国武術の練習のスタートラインになります。それがその後の長い中国武術の神髄を得る練習の始まりです。

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