中国武術

中国武術上達のコツ ~力意精気神 手眼身法歩~

手眼身法步

みなさんが中国武術を練習する際に、どのようなことを意識して練習していますでしょうか。

100年前を追いかける
中国武術の練習論 ~今も100年前を追いかける~みなさんは日ごろどのようなイメージで中国武術を練習していますか。 https://hanagakibugaku.com/?p=41...

中国武術それぞれの門派には門派独自の要訣がありますが、要訣や注意点には黄河流域に伝わる北派中国武術全般に共通する注意点もあります。

今回はその中から力、意、精、気、神、手、眼、身、法、歩という注意点について解説します。

力意精気神

中国の風景中国の風景

ここでは力意精気神について別々に解説します。

力はとは中国武術でいうところの「勁」にも相当する言葉で、打撃力、パワー、物理的な力量等を表すものです。力と一文字で表していますがこれには勁の概念も含まれます。

日本人は「発勁」と言えば何か神秘的なイメージを持つ人もいるようですが、中国人にとってはただ「力を発する」というだけの意味です。ちなみに力には速度が速い力もあり、勁には速度が遅いものもあります。力と勁の違いは速度ではありません。違いは何かというと、「イメージ」の違いです。イメージはイメージですのでこれ以上深くは何も申し上げられません。

意とは二字熟語にすると意念、意思、意志、意識の意です。英語では「mind」が意に相当します。刺激を情報として受け取り処理する能力、体に対して具体的な指示命令を出す能力を指します。感じる、処理する、対処する、思考する、動かす、計算する、戦略を練る、命令する、これらが意の作用です。機械でいえばソフトウェアの部分当たります。

精とは人体を構成する物質的な概念です。人間のエネルギー源となる概念でもあります。中国の伝統的な概念では精は腎に宿り成長や生殖を司るとされています。精には父母から受け継いだ先天の精と、生まれてから食事により摂取することで生まれる後天の精という概念があります。

いわゆる元気の源という感じの「概念」です。古人が考えた人間のエネルギーの中の一つを精と名付け、それを概念づけたものです。

気とは生命活動におけるエネルギーのような「概念」です。もともとは「气」という文字を使って表していましたが、後世「氣」という字が当てられるようになりました。中国人が考える気とは、体の中を循環している目に見えない生命体のエネルギーであるとともに、空気や大気、気息、つまり呼吸と関わる概念を持つものです。

気の概念はとても広く、中国語でも「気分」とは「その場の雰囲気、ムード」を現す表現であり、大気、気体、気圧、空気、というように空間上に漂う気体の概念も包括します。ここまで説明させていただいてイメージがなんとなくつかめたかもしれませんが、気とは流動的なものの概念です。

中国人はこの概念を自然現象や人間の生命の原動力、または呼吸についてまで幅広く解釈し日常的な概念として理解しています。

日本語でも「病は気から」といいますが、中国でも病は「気血の巡りが滞っているため起こる」ものとされており、それを正常にしてあげると病的状態からは回復すると信じられていました。それが鍼灸や気功という方法論に結びついています。

神(しん)とは、人間の精神活動を主宰するものです。日本語でも神経、精神に「神」という文字が入っているので理解しやすいと思います。神が働いてるときには覚醒状態、集中力、判断能力が高まります。つまり精神活動、思考能力、判断能力、意識活動に大きくかかわる概念です。

手眼身法歩

中国の風景中国の風景

手眼身法歩についても個別に概念を解説します。

手とは手法、つまり手の取り扱い方法のことです。通常、武術で攻撃や防御に最も普遍的に使われるのは手です。その手をどう操作するか、どう動かすか、どう打つか、どう受けるか
という具体的な方法論が手法にあります。とくに連続攻撃を得意とする門派、高速で攻防を行う門派は手法が緊密か、快速か、霊活且つ変化が多様かが非常に重要です。

中距離や遠撃の場合、打撃で相手に接触する部分は拳や指、掌という手の末端部になることから、これらを使ってどのようにしてインパクトを与えるかという方法を知ることも重要です。

眼法とは即ち目の操作や注意点です。相手と対峙した時の相手の見方、目配りの仕方、発力の瞬間に目線をどうしておくべきか、など目に関する注意点が眼法です。

相手を打つ場合には打つ場所を見ることにより、そこに意識を導き、力を導く、といった直接的な打撃の方法論から相手の動きを察知するためには相手をどのように俯瞰したほうがいいのかという方法論までが眼法に含まれる概念です。

身法とは、主に股関節から肩にかけての胴体の使い方に関する概念です。中国武術では胴体を絞めず、緩んだ状態にしながら深層筋を十分に伸縮させて、それらをも技撃の効果を高めるための助けにします。

胴体を柔らかく使えば、攻撃を受けた際の衝撃力を受けなしたり、胴体により打撃力をさらに増幅させたり、攻撃を躱したり、いろいろな応用ができます。

股関節、腰、腹部、胸、背中などを柔らかく使って効果的な動作を行う、これを要訣として体系化したことは、中国武術の優れたところです。ただ、残念なことにこの身法をうまく体現できていない方がたくさんいることもまた事実です。

手眼身法歩の中の「法」とは武術における方法論全体を一文字で表したものです。法とは「方法、やり方、コツ、ポイント」のことです。打撃の方法、防御の方法、ステップワークの方法、戦術、練習のコツ、そのようなものをすべて含めた概念です。

歩は歩法のことです。すこし広く考えると下肢の練習法や立ち方も含まれてきます。歩き方、武術の技撃におけるステップワークなど、がこれにあたります。

中国武術に於いて拳を練る際に最も重視するのは、脚、腿を練ることです。歩法が霊活かどうかは、技撃の優劣に大きな影響を与えます。歩法を極めれば、自分は打てるが相手の攻撃は届かない状態を作り続けることもできます。

歩法が巧であるかどうかは、例えて言うなら要塞砲と戦艦(戦艦は移動できる)、野戦砲と戦車(戦車は移動しながら弾丸を発射できる)の違いにも相当します。

力意精気神、手眼身法歩のまとめ

中国の風景中国の風景

今回は中国武術の門派を問わず要求される要訣である力意精気神と手眼身法歩について解説しました。

中華文明では要訣や秘訣を一文字や二文字という極めて短い音節にまとめます。これは漢字が表意文字であり、一つの音節に凝縮した意味を込めることができるからなせる業です。ですが、できるだけコンパクトにまとめた文章に、どれだけ多くの哲学を凝縮させることができるかが文章を作成するもの教養の見せ所です。

今回のように、だらだらと長い文章で解説をするのは相当な「野暮」で「粗野」な人間のやることであり、私の教養の限界が表れているところです。それはおいておき、中国武術を練習する際には、力意精気神と手眼身法歩の概念を意識して体を動かしてみてください。

今回のブログが皆さんの参考になれば幸いです。

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