中国武術

中国武術が右手を前に構える理由

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

ボクシング、キックボクシング、空手など、試合、スパーリング、組手がある、格闘技、武道では、右利きの場合、左手左足を前に構えるのが一般的です。ですが、中国武術では、右構えを基本とするスタンスを取ります。

中国武術
中国武術が掌打を多用する理由一般的な打撃系武道、格闘技では、堅牢な拳打を主な攻撃手段とします。しかし、中国武術は掌打を多用します。これは中国武術の特徴であり、八卦掌...

結論から言うと、中国武術が右構えを多用することは、武器を取り扱う身体操作を徒手の攻防技巧に応用していることから生じています。本日はこれについて解説します。

片手を後ろに置く意味
中国武術上達のコツ ~片手を後ろに置く意味を理解する~中国武術では、片手を前方、もう一方の片手を後ろに置く動作、姿勢があります。皆さんはこの意味について考えたことはありますでしょうか。片手を...

左手左足を前に構えるメリット

万里の長城万里の長城

まずは左手左足を前に構えるメリットから解説します。

防御力が高い

前面の左手に防御行動を集約できるため、攻撃手と防御手の分担が行いやすく、防御に有利です。

腰の入った利き腕ストレートを打てる

腰の入ったストレートパンチを利き腕で放つことができるため、極めの場で打撃力の高い一発を打つことができます。

おすすめ本
おすすめ書籍・DVD一覧このページでは花垣武学研究会おすすめの書籍やDVDを紹介します。 中国武術関係 中国武術全般 ...

肝臓の被弾回避

右のわき腹が後ろ側に位置するため、肝臓へのボディーブローと回し蹴りによる被弾を少なくできます。

一対一の徒手攻防技術としては左側を前にする構えは、相対的にかなり有利です。

左手左足を前に構えるデメリット

万里の長城万里の長城

左手左前を前にするのにはデメリットも存在します。デメリットは以下の通りです。

心臓が前側に位置する

徒手ではそれほどのデメリットはありませんが、出血を伴う戦闘行為を行う際には、心臓に近い部位を前面にさらすことは、致命傷になる可能性が高まります。

おすすめグッズ
おすすめグッズ一覧このページでは花垣武学研究会おすすめのグッズを紹介します。 中国武術関係 武術シューズ ...

利き手の射程距離が短くなる

利き手(右手)が後ろに位置するため、強力な打撃を打てる利き腕の射程距離が短くなります。

中国武術がそれでも右構えをする理由

中国の風景中国の風景

徒手武術では、左側を前にして構えるほうが、相対的に有利です。右利きのボクシングの選手のほとんどが左手左足を前にして構えていることからそれが証明できます。ですが、中国武術はそれでも右構えを行います。理由は以下の通りです。

武器を扱う身体操作由来の身法

中国武術がそれでも右構えをする理由は、武器を扱う身体操作をそのまま徒手による攻防に応用し、運動神経の規格統一、練習体系の統合による効率化、及び、様々な状況を想定した場合の全体最適を考慮した結果です。

様々な状況とは以下の通りです。

味方 人数
一人 素手 一人 素手
一人 素手 一人 武器
一人 武器 一人 素手
一人 武器 一人 武器
一人 素手 複数 素手
一人 武器 複数 素手
一人 武器 複数 武器
複数 素手 一人 素手
複数 素手 複数 素手
複数 素手 一人 武器
複数 武器 複数 徒手
複数 武器 複数 武器

人間は、剣や匕首を持った状態では、その射程距離を最大化するため、右手を前に突き出します。同時に、被弾面積を最小化するため、強い半身になります。これは、フェンシングと同様の考え方です。

剣や道具を右手に持つ意味は、90%の人間が右利きであることと関係があります。余談となりますが、なぜ人間に右利きが多いのかはいくつかの説がありますが、有力な説は2つです。

中国武術の接近戦
中国武術上達のコツ ~中国武術が接近技術を目指す理由~みなさんは「中国武術の高級技法には接近技法が多い」「中国武術の妙技は肌が擦れ合うほどの接近距離にある」、という話を聞いたことがある方はい...
  1. 右脳と左脳の機能分担が手の機能分担に表れている
  2. 心臓から遠い方の手を多用する右利きの人間が生き残り、右利き遺伝子が残った。

まとめ

中国の風景中国の風景

中国文化は、書法でも剣法でも道理は同じく(剣法與書法道理相同)、右手に筆、剣持つことを前提に全体がデザインされています。多数派を占める右利きの人間に合わせて、社会構造を規格化することで、社会全体を最適化しようとした古代中国人の工夫がこれにも見られます。

この記事を書くにあたり、山田英司氏の書籍の内容を参考にしています。この本には本稿と類似する内容が記載されております。一読の価値があると思います。

中国武術の姿勢
中国武術における上体の姿勢のあり方の考察 立身中正のメリットとデメリット空手、格闘技、武道、武術、基本とする姿勢は様々です。その中で、上半身は立身中正(地面と直角にまっすぐ立つ)を保つべきか、前傾姿勢をとるべ...
関連記事