中国武術

中国武術が掌打を多用する理由

中国武術

一般的な打撃系武道、格闘技では、堅牢な拳打を主な攻撃手段とします。しかし、中国武術は掌打を多用します。これは中国武術の特徴であり、八卦掌、劈掛掌は、門派名にも拳ではなく掌を充てます。掌打には、

  • 拍(手のひらでひっぱたく動作)
  • 劈(手刀で切り下ろす動作)
  • 穿(指先で突き刺す動作)
  • 掛(下から切り上げる動作)

他、さまざまな動作があり応用変化が用意です。

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本日は、中国武術が掌を多用する理由について解説します。

掌打のメリット

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まずは掌打のメリットから解説します。

変化が容易である

つかむ、引っ掛ける、引っ張る、突き刺す、振り回す、など変化が容易です。拳、勾手への変化もスムーズにできます。

聴勁に有利

添える、ねばりつく、ひっぱるが可能で、相手との接触面積が大きいこと、感覚が鋭敏な手の平が使えることから、相手の重心位置、挙動、つまり聞勁(勁を聞くこと)にも有利です。

太極拳も掌を多用します。聴勁に有利です。

脳が伸筋を意識する

掌という手の形は、筋肉を伸ばす形であり、筋肉を屈曲させる拳とは反対の意識を以て形を作ります。掌を作ることで、脳は体全体を伸ばす方向に意識を向けます。よって掌だけでなく、体の動き全体がのびのびとした動きに変化します。

接触面積が大きいためが摩擦が大きく、打撃力を損耗しない

掌打は拳よりも相手の胴体との接触面積が大きいため、摩擦力が強く、打撃が滑ることによる威力の減衰が少ないです。

掌打は弾丸に例えると、鉛弾のような作用があります。硬くはないですが、標的に当った瞬間に潰れ、相手の筋肉という表面装甲に弾かれることなく、相手の体に粘り着き、打撃の波紋を内部に効率的に響かせることができます。

この論理は、近代に発明された徹甲弾と同じ考えで説明できます。戦闘艦艇の主砲に搭載される徹甲弾は、標的への着弾時の衝撃による弾帯の破壊を防ぎ、装甲への食いつきをよくするため、柔らかい金属の被覆を取り付けています。

これにより、弾丸は着弾時に潰れながら、装甲表面硬化層に対して破砕を及ぼし、弾体の貫通を助けます。これらにより艦砲の砲弾は第一次世界大戦頃には貫徹力(貫通力)大きく増加しました。

内部への破壊力の浸透

掌打の殺傷力についてもう一段突き詰めると、掌打は粘着榴弾のような働きも持ち合わせます。粘着榴弾とは、表面に着弾後、つぶれて密着した後起爆され、起爆によって生じた衝撃波を装甲材の裏側に伝え、剥離飛散することにより、飛び散った装甲自体の破片によって内部の人員、機材に損傷を与える弾丸です。これと同様の原理で、体の表面よりも内臓に損傷を与える攻撃力を秘めます。

浸透勁、透勁という造語もあります。

掌底を使った場合、手首を痛めにくい

掌底を使用して打撃を行う場合、手首の角度が固定されているため、手首を挫く可能性が減少します。木やコンクリートを打てばわかりますが、一撃当たりの体重投射能力では拳よりも掌打のほうが優れています。

掌打のデメリット

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掌打にはメリットの他にデメリットも存在します。デメリットは以下の通りです。

関節技に弱い

指が伸びているため、指を掴まれれば簡単に関節技に掛かります。

握り込む瞬発力を使えない

拳は着弾時に握り込むという意念を用いることにより、拳を瞬間的に硬化させ、打撃力を増加できます。掌打の場合、拳とは反対の当る瞬間に伸ばす、拡張させる、包み込むという一歩難解な挙動が必要ですので有効な攻撃性を出すには拳打よりも訓練が必要です。

構造上、拳より脆く突き指しやすい

指を握りこむ拳に比べ、構造上脆いという特性があります。

指先で相手を突く攻撃を行う場合、突き指をする可能性が高いです。よって、相手の堅い部分への攻撃には向かず、喉元、目などの急所に対する攻撃のみとなります。

グローブをはめる動作に応用が利かない

もともと中国武術は手に何も付けていないことを想定して徒手套路が組み立てられいます。グローブをはめるようなスパーリングを行う場合、掌の技術は応用が利きません。しかしこれは中国武術の本質を考えるとあまり問題になりません。

それでも中国武術が掌打を多用する理由

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掌法には、それなりのデメリットがあります。しかし中国武術はそれでも掌を多用します。打撃力以外に以下の理由があります。以下の理由はむしろ本質となります。

武器術の名残り

中国武術が掌打を多用する理由は、中国武術の核心技術が、武器術であることです。剣、刀の意識を徒手武術に残し、いつでも武器というアタッチメントを追加できるようしておくためには、拳ではなく、掌で動きを練る方が効果的です。

掌を基本的手型とし、訓練を行えば、徒手空拳において、剣、刀の練習が行えます。

「練拳即練兵 練兵即練拳」まさに、拳を練る事それ即ち兵器を練る事、であり、さらに兵器を練る事それ即ち拳を練る事です。拳兵一体の普遍的考えです。

これが本質その1です。

意を通すため

人は手の抹消部である指を握り込むと、意識が末端部で握り込まれてしまいそこで止まってしまいます。ですが、伸筋を使う掌を使用すれば、指先の意識は、指先という物理限界を超えてより遠くまで伸びようとします。意識を末端部より先まで届けることができます。これは一つは勁の慣性を高め、武器への転用を容易にします。

本質その2です。

まとめ

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中国武術は、兵拳一体の攻防技術が特徴です。掌打の特性を理解し、把握し、体現し、深い理解のもと奥深さを楽しんでいきましょう。

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