中国武術

中国武術上達のコツ ~套路の伝承を知ろう~

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皆さんは自分が習った套路の伝承はご存知でしょうか。套路の由来なんてどうでもいい、武術は使うためにある、套路の歴史なんて知らなくても問題ない、そんなことを思っていませんか?実際のところ、套路の系譜を知ることは伝統武術を修める上ではそこそこ重要です。

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今回は中国伝統武術において套路の系譜を知ることの重要性について解説します。

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套路の伝承を知ることの意味

中国の女性中国の女性

套路の系譜を知ることには以下のような意味があります。

正当性を主張できる

套路の系譜を正しく認識することで、その套路が自分が所属する武館や老師の系譜に正しく
連なっていることを主張できるようになります。

老師が継承する套路の中には老師が師爺から学んだのではなく、別の老師から受け継いだものもあります。そのような事実もふくめて認識することで自分が練習していることを深く認識していることを周囲に知らしめる効果があります。これは自分の技術の権威性を高める効果を持ちます。

正当な伝承者であることを主張できる

套路の系譜を正しく認識することは門派の継承者としての正当性を後押しします。自分が師や師兄から継承した套路の来歴を知り、その系譜を継承していることは継承者としての権威を高めるための助けになります。

「この套路は老師がどなたから学んだものなんですか?」という問い合わせを受けたとき、「ちょっとわからないです。順番を習っただけなので。」という回答と「この套路は老師が何歳のころ、どこどこで誰誰に習ったもので、その誰誰はこの套路を誰誰から継承していてます」というほうが信頼性がありますよね。そういうことです。

講習会に行って套路をかじっただけの輩を排除できる

套路や伝承の系譜を知っていることは権威と自信につながります。

またそのような精神論は置いておいて、そのあたりの背景を知っているかどうかで、自分の認知度のレベルを示すことができるため、ちょっと老師の講習会に行ったり、一度か二度現地で套路の振り付けと順番だけを習ってきただけで、あたかも自分が老師の自慢の弟子であるかのように装う輩を排除できます。

自分の師の実像を知ることができる

師から継承した套路の履歴を老師に尋ねたとき、「実はよくわからない」という回答がある場合もあるでしょう。実はよくわからないという回答にはいろいろあります。例えば以下のようなものです。

  • 老師からは套路の動作だけ習っただけ
  • ある日師兄がやってきて動作だけ教えていった
  • 老師にも聞いてみたが老師も知らなかった
  • 老師から聞いたけど誰の系譜か忘れた
  • 実はこの套路は自分で作った
  • この套路はどこどこの講習会で習っただけのやつ
  • Youtubeで見ながら覚えただけ
  • 山の中で道に迷っていたところ仙人が現われて私にこの套路を授けた

このような話の中から老師の一人の人間としての実像を知ることができます。老師が自分の個人指導ではなく、武術館という形式で運営をしている場合、武術館には様々な系譜の套路が伝承されます。

中には老師の師兄弟や弟子が武館の中で後輩に指導しそれが武術館のカリキュラムとして定着してしまったものもあります。そのような套路は館長である老師自身は打つことはできません。

老師は神ではありません。人間です。老師は「お爺さん」、ときには「ただのおっさん」です。自分が習った、出来る、という套路が全てできるとは限りません。実は套路の系譜を詳しく知ることは、自分の師の実像を知ることにもなります。老師が一人の人間であることを再認識できるきっかけになると思います。

信頼性を上げることができる

套路の系譜を知ることで自分が伝承している内容の信頼性を上げそれを示すことができます。今はSNSで誰とでもつながる時代です。さらにYoutubeで動画が見放題です。中国武術の技を求めている人や学生は老師の見識、指導方法、技術内容、経歴を客観的に見定ることができます。套路の系譜を知っておくことは信頼性、権威性の向上につながります。

知識を示すことができる

套路の系譜を知り、武術の実技だけではなく様々なことを知ることで知識を示すことができます。

国防大学、防衛大学、政治作戦学校や陸軍士官学校では実技や軍事演習の時間以外に戦史、戦術などの座学の教科がたくさん設けられています。それと同様に、中国武術も体を動かす実技の部分だけが能ではありません。武術の歴史、門派の歴史、套路の成り立ち、養生術等武学の部分も合わせて中国武術です。

もし体を動かすこと、フィットネスの教材として中国武術を借用している場合は問題ないですが、武術老師として活動している場合、自分が責任を持っている門派の内容について知らないことが多すぎる場合それはとても恥ずかしいことです。

套路の系譜を知る方法

運動する中国人運動する中国人

ここでは套路の系譜を知る方法を解説します。

老師に套路の由来を尋ねる

まず第一に套路の由来を訪ねるべきは自分の老師です。いきなり套路の由来を聞くのはすこし野暮です。一通り習ってある程度恰好がついたころ合いを見計らい「ところでこの套路はどのような系譜のものなんですか?」と尋ねてみましょう。

ネットで情報を収集する

老師から系譜を聞き出したり、或いは詳細を教えてもらえなかったりしたとき、次はネットの情報を使って由来を調べましょう。Youtube、中国語のサイト、門派のサイトなどを調べてみましょう。

中国武術の情報は外国語である日本語からの情報は限られます。出来れば中国語の情報に当たるようにしましょう。中国語を読むのが面倒だと感じる方は参考としてgoogle翻訳を使ってみてください。

文献、資料から情報を探す

それからネットでもわからない場合、文献を探ってみましょう。中国語の書籍を扱う書店、中国や台湾の武術専門書店、国会図書館、台湾や中国の国家図書館に行けば様々な資料が手に入ります。

師兄に尋ねる

ここまで言ってもわからない場合は、老師ではなく同門の師兄に聞いてみましょう。その師兄が博識で武術の歴史、系譜にも詳しければいろいろなことを知っています。まずは同門の中でいろいろ調査をしてみましょう。

武術史に詳しい知人に尋ねる

師兄や同門の先輩に聞いても套路の系譜がわからない場合は、、武術の歴史に詳しい業界の先輩や友人に尋ねるのもいいでしょう。これを繰り返し、訪問、聞き取り、調査を何度も行い、套路の背景を少しづつ調べる、根気のいる作業ですが学術研究の研究員のような姿勢で武術の研究に取り組めば、比較的信ぴょう性の高い情報を集めることができると思います。

套路の伝承を知ることについてのまとめ

套路をねる男性套路をねる男性

今回は中国武術の練習において、套路の由来を知ることの重要性を解説しました。本当のことを言うと、個人で趣味で武術を練習している限りにおいては套路の系譜をいちいち調査する必要はありません。

ですが、今後業界の方と広く交流したい、また今後自分が学んだものを広めたい、現地でも聞き取りしながら系譜や技術体系全体を研究したい、という方は套路の由来は知ることがあると考えています。

あなたが老師から学んだ套路は、あなたの老師がいつ、どこで、誰から、どのように習得したか、またあなたの老師にその套路を伝えた人物はその套路をいつ、どこで、誰から、どのように学んだか、突き詰めていくことは武術を武学たらしめる上でとても重要です。

私もこれまで様々な方からいろいろな套路を学んできました。すっかり振り付けを忘れてしまったものもたくさんあります。私が学んだほとんどの套路は、「老師が本筋の後継者の方から手取り足取り丁寧に学んだ」ものではないと推測しています。それらを含めて、私は武術の現実を知るためにこれからも調査を続けていこうと思います。

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