日々の練習

今日の練習 八卦掌 御津生涯学習会館にて 2020年10月18日

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金木犀の香りがいろいろな所から立ち上る私が一番好きな季節の到来です。皆様いかがお過ごしでしょうか。土曜日から急に空気が冷たくなり、本格的な秋の到来を感じさせてくれる天気となりました。

八卦掌の練習
今日の練習 八卦掌 神宮東公園にて 2020年10月11日昨日まで日本列島に影響を及ぼしていた台風が去り、本日は強い日差しが戻ってきました。 https://hanagakibugaku....

本日から新型コロナウイルスで中断していた愛知県豊川市の御津生涯学習会館でのレッスンが再開となりました。今日は合計3名で八卦掌の復習と解説を中心に練習を行いました。

2020年10月18日の練習内容

御津生涯学習会館御津生涯学習会館

会場の掲示板には「八卦掌練習会」というプレートが用意されていました。本日の練習内容は以下の通りです。

放鬆功

本日は久しぶりの御津生涯学習会館での練習となりましたのでまずは上半身の暖身、放鬆功から練習を始めました。

当会の準備運動は体の上のほうから進めます。まずは首を回し首と首の付け根をほぐす練習から始めました。次に腕(臂部)と背中の拉筋を兼ねて腕を引っ張ったりするストレッチを行いました。

ストレッチを行う際には、呼吸の力を借りて行えば、より大きな効果をより少ない労力と負担で行うことが可能です。大きく深呼吸をする際に伸ばしたい箇所を合わせて伸ばし、息を吐く際に強制的に体を緩めていきます。3回程度これを繰り返すとストレッチを行う前よりかなり体が緩んだことがわかります。本日は以下の動画の中にある動きをつかって体をほぐしました。

筋肉や腱を強引に引っ張れば体は伸びます。但し伸ばしすぎて翌日以降まで炎症が痛みが残る可能性が高まります。「伸ばす」よりも「緩める」という気持ちでじわりじわり体の力みを解くほうが中国語で言う「拉傷」(引き伸ばしによる筋肉の炎症)を防止できます。

但し解きほぐすだけでは体の可動域の拡大はあまり期待できないので、「引っ張る」と「緩める」のバランスをうまくとりながらストレッチを行うことが重要です。

基礎十二式

一通り上半身のストレッチを行ったところで、基礎十二式の練習を行いました。

  1. 甩手式
  2. 柔球式
  3. 七星起式
  4. 掩手式

本日は基礎十二式から4種類の動作を練習しました。

胯が∞(無限大)の軌道を描き、上半身は下半身に追従して動きます。手は正中線の前を通って下から上に上げます。この時の動作のスタート地点は足、つまり下盤です。甩手というのは手を振る動作であり、基礎十二式では振り上げる動作となりますが、身体的な動作の起点は足となります。もちろん動作の命令は脳つまり意から発せられます。

揉球式の復習を行いました。本日は動作の意味合いを解説する目的で、この動作における防御的意味合いと、攻撃的意味合いを解説しました。

防御としては、球形の圏(意識的な防衛エリア)を構築することが目的です。この圏に侵入する攻撃を球面の軌道を描く防御動作で立ち向かい、力を逸らします。

揉球式は体の協調性を養うことが主目的の動作であり、防御的な意味合いも強いものですが、これを攻撃的に活用するのであれば、まずは相手の手首の内側を打ち、弾き飛ばすという方法が使えます。また手の交差を利用して「拿」(極め)を行ったり、太極拳の雲手の靠法のように腕の外側や肩を打点とし、靠打(体当たり)とすることも可能です。

接近している時にこの手の動きをすこし変化させることにより、相手の体を巻き込む摔法(投げ)への変化も容易です。打踢拿摔がシームレスに一体化していることを多少技撃的実演を踏まえて開設させて頂きました。

七星起式

胯が水平に∞(無限大)の軌道を描くことで生まれる力を使って、両手を抱(バオ)するように動かしていきます。円く連続性のある動作と意識が萎んでしまわないようにするために、動作では「抱」というイメージをもって練習して頂いています。

技撃では、手を挟み込む、相手の体ごと抱える、等様々な変化ができます。こちらも一通り解説をしました。

掩手式

足、脚、膝、腿を捻転させることにより発生する粘り強い力を手に伝えて動く動作です。胯と胸の「開合」をうまく利用して力を伝えます。こちらも腕を挟み込んだり、前腕部で打撃を加えたり、肘部で押し込んだり、様々な変化が楽しめます。

反背掌の説明

本日も「反背掌」という動作の解説も行いました。これは八卦掌の動作ではなく、新生国術館館長であった青島出身の亡き老師の置き土産です。肩回りをほぐす意味合いで動いていますが、打ってくる手をはたき落とし、そのまま相手の体を打っていくという攻撃性の高い動作です。

その他の解説内容

本日は参加されている方から中国武術や八卦掌に関する質問があったためそれに回答する時間を設定しました。いろいろな質疑応答を行いました。質問と私の回答についていくつか紹介します。

柔とは

柔とはしなやかで硬くない状態の事です。関節技や投げを表す言葉ではありません。対義語は剛です。柔はやわらかいという表現もできますが、外力対して抵抗なく変形してしまう様な概念ではなく、粘り、コシ、弾力、受け流すだけの適度な反発力を備えたような概念です。日本人が考える柔(じゅう)ではなく、中国人の考える柔(rou)を解説する難しさを感じました。

式と勢の違い

式と勢は全く同じ発音です。双方ともに(shi 4声)であり音声上は完全に同一で区別はできません。八卦掌でも順式掌という書き方をしているところと順勢掌という表記があることはこの理由です。ですが文字にすれば意味合いが異なります。

まず式とは、スタイル、形式、模式、方式の式であり、外観や出で立ち、姿を物理的に見た形式ということができます。その中には、内包する気迫等は含まれません。

勢とはその式や立ち振る舞いの中に内容される、気迫、雰囲気、風格、オーラ、覇気、パワーのようなものが外まであふれ出した状態を表します。

shiを式ととるかか勢ととるかにより、その人物が中国武術の姿勢に対してどのような解釈と段階にいるのかがわかります。

内家拳と外家拳

中国武術は内功を重視する「内家拳」と外功や姿勢を重視する「外家拳」に分類されるとされます。これは中国武術の門派のカテゴライズするために生まれた分類方法の中の一つです。現実には、内家拳と外家拳という厳密な門派の区別はなく、練習者の志向によって決定されます。

内家拳と言われる太極拳、形意拳、八卦掌の基本功や套路を練る、外観や姿勢、動作の正確さを求めているだけで内功を行わない段階では内家と呼ぶことはできないですし、逆に、外家拳に分類される拳種を練る場合に、内功、内力、内勁と意念の運用や、気血の流れを重視してこれを練習する段階であれば、内家的と言うことができます。両者には明確な境界線はありません。

勁とは

勁とは簡単に言うと精錬された力の事です。身体が高度に協調し、呼吸、意念や精神までが高いレベルでまとめられ統一された状態から生み出される力とも言えます。対語は蛮力や拙力です。腕の筋力や収縮する力こぶで強引にでる粗い力のような意味合いです。

勁は鋭い、とも言いますが、遅い勁もあり、早い蛮力もあります。

また現地の中国人老師は勁と力をそれほど厳密に区別しません。内勁と内力は同様の物として取り扱いますし、「要発力!」「用力!」という言い方は、「もっと激しく打て」ということを意味します(勁を出せということです)。勁と力というのは、武術研究者がそれらを研究の過程において分類し明文化する際に強調した概念であることを覚えておいてください。

本日のまとめ

御津生涯学習会館御津生涯学習会館

本日は、3か月ぶりの豊川市での練習会となりました。練習に来て下さった方が御津生涯学習会館の研修室を借りてください、そこで黒板をつかって技術と概念の解説を行いながら実技を指導できました。来週も同じ時間に練習会を開催予定です。

YouTubeチャンネルでは、武術の動作を紹介しているだけで解説は行っておりませんが、練習会ではYouTubeに投稿している動画の内容についての質問も受け付けております。

急に寒くなってきておりますので皆様も体調に気を付けながら武術ライフを楽しんでいただければと思います。

今日の練習 八卦掌 御津生涯学習会館にて 2020年10月25日本日は冬の香りが漂う強い風が吹く一日でした。本日も先週と同じく午後1時から愛知県豊川市の御津生涯学習会館会議室にて八卦掌の練習を行いまし...
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