中国武術

中国武術上達のコツ ~用法に捕らわれないこと~

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みなさんは中国武術を練習する際どのようなことを意識して練習していますか。私は中国武術を学び始めたころ、用法や実用性への興味が尽きず、用法を良く師に聞いていました。

練習を10年以上続け、一通りのカリキュラムを学び終えたころ、用法にはあまり興味を示さなくなっている自分に気づきました。中国武術を修める場合、用法を理解し習得することは実用面において重要ですが、時には用法を考えない練習をすることも重要です。

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本日は中国武術を練るにあたり用法に捕らわれないという考え方について解説します。

用法に捕らわれるデメリット

中国の風景中国の風景

中国武術を練習する際用法に捕らわれるデメリットは以下の通りです。

技撃に偏る

用法を中心に考えがら練習するとどうしても練習形態が技撃中心に偏ってしまいます。技撃性は中国武術には無くてはならないものですが、技撃性は中国武術の一部分にすぎません。
ですから技撃性に偏ってしまいすぎるのは如何なものかと思います。

意識が外側ばかりに偏る

武術の用法を意識して練習すると、技撃という武術の本質をしっかりカバーできます。ですが、「どう受けてどう打つか」を常に考えるため、意識が常に自分の外側に向いてしまい、内面の運用をおろそかにします。つまり、拳を練るのには良いですが、功という概念を練ることが後回しになるということです。

功はつまり、筋骨の増強という物質的な概念から、自分の動作の協調性の向上、身体と意念の一致、呼吸と動作のマッチング等内面の部分を重視する概念です。武術の総合的なレベルの底上げをするためには、用法に囚われすぎることは武術の一つの側面に偏ることを意味します。

対決的な思考になる

用法を考えるということは、つまり技撃、どう打つか、どう受けるかを考えることになりますよね。そうなると、考え方は自然に人と対決しようとする意識が高まってしまいます。

兵法の要旨は「戦わずして勝つ」ことですから、対決して勝利をおさめようとしたり、自分が怪我を負うリスクを取りに行くということは、中華文明の伝統的な戦略的価値観とは異なってしまいます。

勁や運気に意識がいかない

練習中、用法を考えると、勁や気の運用に意識が届きにくくなります。意識は常に自分の外面に対して張りつめ、内面を意識するべき部分を、外部へ持って行ってしまいます。

用法を考えれば護身術として技術は向上しますが身体操作のレベル、呼吸や意念の操作への意識が希薄になるため「功」を練るという面の成果では見劣りしてしまいます。

調和、協調の考えから外れやすい

用法を考えることは重要ですが、体と心の調和、協調をおろそかにしがちになります。動作と意念の調和と協調に意識が向かない状況が続くと、それは人間社会における調和と協調をおろそかするという考えにつながります。

これは私個人の考えではありませんが、武を練ることは決して褒められたことではない不祥の器を練ることであるわけですがこの中で処世の術を学ぶという意味は少なからずあるわけです。用法を中心に武術をとらえることはこれとは相反する思想につながります。

怪我をしやすい

用法に捕らわれて練習すると、対打などで実証を重ねたくなる気持ちが出ます。対打、対練は一人で練習するよりも怪我をする可能性が高くなる練習方法です。スポーツは気を付けていても怪我をしたり運動障害を負うものです。

ましてや技撃の練習では傷害が発生する可能性はとても高くなります。用法を一例として知っておくのは大事ではないとは申しませんが、怪我しないように十分注意して練習を行ってください。

練習しても用法を使う機会は殆どない

中国武術を養生目的で練習すれば体は健康になり健康寿命の延長、ストレス解消等に有益です。また、武術を練れば体の協調性や追従性が向上するため、運動機能が向上します。

用法を練習することは、技撃的な自信につながり、護身の技術は向上しますがこれを実際に使う機会はめったにありません。格闘術としては中国武術はあまり効率の良い技術体系ではないですし、使用頻度の低いもののために技術を磨き続けても練習結果の期待値はあまり高いものにはなりません。

用法を練るメリット

万里の長城万里の長城

これまで用法に拘るデメリットを説明しましたが、用法を練ることにはメリットもあります。メリットはただ一つ、技撃性が高まるということでしょうか。

まとめ

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中国武術には実用面として技撃性があり、それは具体的には打撃力を高める方法や体の操作能力を高める方法、そして技法の使い方、つまり用法というものがあります。

中国武術において、打撃力を高めるための訓練方法は他の武道や格闘術では明文化しない(実際には同じようなことをしている)物が含まれます。意識や呼吸についての要訣も伝承されておりこれらの体系が現在から100年ほど前に整理されています。

他の武術にも通じる内容もありますが、中華文明独自の解釈で説明されている内容もあり、独特の理論で構成されたものも多いですが、私のこれまでの知見を総合して言わせていただくと、用法については他所の護身術と似たり寄ったりの内容を練習します。

身体能力の開発と向上には相当な手間暇がかかりますが、用法の取得は比較的簡単です。見ればすぐ知識として吸収できます。ですからそれほど大きな価値があるとは考えていません。

用法は中国武術の実用面を支える一例としてほどほどに練習していただき、全体的なバランスを見ながらレベルの向上を図っていただければと思います。

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