本日は2021年月11月28日(日)です。本日は愛知県豊川市御津の御津生涯学習センターで練習を行いました。
目次
2021年11月28日の練習内容
本日の練習内容を紹介します。本日の練習内容は以下の通りです。
準備運動
これまでの練習は準備運動に膨大な時間をかけていましたが、本日は実験として、基礎十二式を準備運動とするということをテーマに練習しました。とはいってもいきなり基礎十二式を始める前に、まずはシュワイショウだけを軽く行いました。
基礎十二式
本日は基礎十二式自体を準備運動として練習しながら体をほぐすという実験を行っています。本日は基礎十二式から以下の9種の動作を練習しました。
甩手式
基礎十二式の第一式の甩手式です。手を体の真正面の下から上に向かって振り上げ、顔の上まで来たところで左右に翻して開く動作です。手が後ろに行ったところで腎臓当たりをはたくようにします。
上半身の動作が中心となっているように見えますが、動きは下半身で生み出され上半身は下半身に導かれて動かされている感じとなります。
これを行って肩や腕を振り力を抜くための予備動作といたしました。
揉球式
体の前方で球を描きそれを練るような動作を行います。球面をイメージして手を動かしますが動作の源はシュワイショウと同じく下半身から発動されます。
七星起式
前後に大きく足を開いて弓歩を作ります。上半身を前傾させ後ろ手を大きく前に出し、後ろ手と連環させながら引っ張る動作です。手は握りこむというよりも両手で綱や人の手を挟み込むイメージで行うと動作がやりやすいと思います。
掩手式
手を水平に近い状態にして、肘を曲げ、両手を連環させて挟み込む動作です。足と脚で起こした力を膝と腿と股関節を経由して、指先まで伝えるようにすることがポイントです。でも最大のポイントは下半身の捻転動作と股関節の切りです。
穿掌式
馬歩になり、掌を交互に上に向かって突き上げる動作です。指先を伸ばし切った状態になると体は自然に収縮するように動きますのでそれに逆らわず手を外に翻しながら次の手を上に突き上げていきます。
探掌式
站樁を作って呼吸を整え站架式を作ってから、搭手で手を受け(攻撃にも変化する)、その手を絡めて牛の舌のようにして引きつつ、二発目に穿を挿し、そこで防がれた手を引っ張りながら虚になった中段に掌打を打つという動作です。跨の切りを上半身に伝えて打ち出します。下半身をしっかり練る必要があります。
擺扣穿掌
探掌と同じく站架式を作ってから、前手で外領しつつ、擺歩し、その後前進して扣步を出します。その際180度方向転換をしながら穿掌を打ち出します。擺步と扣步という歩法とスムーズな回転と歩行転換を練りつつ穿を打ち抜く身法を練ります。
意、気、力が配合すると動作がスムーズかつまとまりを帯びます。
擺尾掌
站架式を行った後重心を片側に移動し、後ろの手を頭の後ろに置き形を作ります。その後、反対側に大きく手を伸ばし、弓步を仆歩に変化させながら手を慣性に従って下に這わせます。そして仆歩から弓歩になるという動作です。歩形を変化させる途中でも股関節の位置ができるだけ高くならないように気を付けて行ってください。
蹋步穿掌
站架式を行った後体の前で手を平行に作り、そこから脇と体の側面に沿って掌を動かしつつ仆步になります。そのあと仆步から螺旋を伴い仆步に変化する過程で、手は横隔膜付近を通過しながら穿掌を出します。
始めは股関節の可動域が狭く非常につらい動作ですが、回数をこなしているとだんだんと動作に慣れます。下に伸ばす掌と斜め上に伸ばす掌は対称となるように全身に意識を置いて行うようにしてください。これが全方向にアンテナを張れるようにするための中国人の知恵です。
転掌
本日は転掌のなかで最も基本となる立樁式について復習を行いました。転掌のポイントは宇ウェスト(腰部)をしっかり捻転させること、上半身を放鬆させること、跨を折り、重心を鎮めること等です。
これらを意識しながら絶えず角度を変えて円周上を回る練習をしました。見た目はただ優雅に円の上をぐるぐる歩いているだけです。でも正しい形ができるまでは絶えず調整を行い続ける必要があるため頭は目まぐるしく動きます。
動作が無意識に正確にできるようになれば、体は動いているにも関わらず心は平静で澄み切った水面のように静かになります。
本日紹介した武術理論
本日は基礎十二式の他に以下の理論について説明を行いました。
陰陽
動作には打つと引く、吸うと吐く、など逆の概念があります。これを中国人は陰と陽という易経の考え方で説明します。陰と陽は白と黒のようですが、陰陽の比率は絶えず変化し続けるものであると定義づけています。また陰の中にも陽があり、陽の中にも陰があります。ちょうど昼と夜が時間とともに絶え間なく変化し、日没と日の出を繰り返すがごとくです。
蓄勁と發勁
勁には蓄と発があります。これは反対の概念とも言えますが、陰陽と同じく、蓄の中に発があり、発の中に蓄があります。はじめは蓄→発、蓄→発として勁は途切れても問題ありませんが、攻防の隙間をなくし連綿たる動作を目指すのであれば、蓄の中に発があり、発の中に蓄があるという陰陽双備の状態が続くことが望ましいです。
意、気、力
中国武術の動作のレベルを向上させるには意(脳による命令)、気(呼吸の操作)、力(体の実際の動作)がマッチングすることが重要です。これらのソフト部分とハード部分のリンク、マッチングの精度が上がることを上達すると言います。
沉肩墜肘
肩が自然に落ちて、肘が自然に垂れている状態です。肩に力が入らず上半身が自然な形で力んでいない状態を指します。
氣沉丹田
深い呼吸とともに上半身に重心が滞らず、どっしりと重心が落ちた状態です。日本武道で言うと腰を据えた状態、とも言い換えることができます。
含胸抜背
胸が緊張せず、すぼみはしないものの胸が自然に緩んだ状態です。また背中も同様に緊張して張力が発生しておらず、かつ収縮している状態でもなく、抜けた状態を指します。
上虚下実
体の上の方が軽く、重心が下の方に落ちた状態です。気沈丹田と関連性があります。
式と勢の差異
外形の形式である式と内容のある勢の差異の解説をいたしました。
地功拳の紹介
上記の理論以外に、本日は倒立や側転など私が台北で学んだ地功拳の基本功を紹介しました。
本日のまとめ
本日は午後1時から2時間ほど練習し、その後を質疑応答の時間としました。これまで行ってきた準備運動を基礎十二式の中に取り込むことで練習内容の高密度化を図る実験を行いました。
中国武術は、近代スポーツ科学が臨床と実験を経て出された根拠に基づいた理論が普及する以前に、現象から理論づけた体系があります。私は中医学を専門としておらず、スポーツドクターの資格も持っていませんが、自分が嗜む運動の根拠については研究を行っていく予定です。
好きだからこそ常に疑いの目を向ける、これを忘れずに練習をしたいと思います。