日常生活における運動、スポーツ等すべての動作と言われる動作は体全体で起こる様々な動きが複合的に組み合わさったものです。中国武術に於いても「整体」(全体)の概念を用いて全身協調が求められます。
本日は自分の体というリソースを上手に活用する方法、つまり3つの動きを同時にすることのメリットを解説します。
3つの動きとは
本日私が提唱する3つの動きとは、以下の3か所を動かしていこうという概念です。
- 右手
- 左手
- 片足
つまり、打つ、防ぐ、移動する、の様な動作を同時に行えばよいという内容です。
もしあなたが、移動して、受けて、打つ、という動きを順番に別々に行った場合、時間軸は3ターンに分かれてしまいますね。ですが、例えば受ける、打つ、動く、を1つのタイミングで同時に行えば、3ターン必要な時間軸を1ターンに凝縮することが可能です。
これは非常に効果が高いテクニックです。もし相手が移動して、受けて、反撃する、という練習しかしていない場合圧倒的に有利な状況を作れます。ですが私の経験を申し上げると、ほとんどの場合、この3つの動作を同時に行うという概念は、誰もがやっていることです。ただあまり理論化して説明する方が少ないだけです。
3つの動作を同時に行う事例
右手 打
左手 打
足 踢
孫ぴん拳でみられます。
右手 掴み
左手 打
足 足払い
螳螂拳ではこの種の投げがよく使われます。
右手 打
左手 打
足 前進
形意拳の虎形がこれです。
右手 打
左手 受け
足 前進
形意拳の炮拳がこれです。
3つの動きを同時に行うメリット
3つの動きを同時に行えば一定の時間内に多くの動作を濃密に盛り込むことができるので技撃として優位に立てます。もし相手が「受けて、止まって、打って」というスタンスを取るのであればなおさらです。
足の移動には、攻撃を避ける意味合いもあれば、距離を調整する意味合いもあり、打撃力を高めるという効果もあります。また、打つ手と反対手の手の所作をうまく工夫すれば、防御動作を行いながら打ち手の打撃力を高めるための補助動作にもなり得ます。
例えばボクシングを見ていただければわかりますが、プロボクサーの選手はブロック、攻撃、前進を同時に行って動いていますね。しっかり踏ん張って移動せずにその場で何かをするという所作は少ないと思います。
3つの動きを同時に行うデメリット
3つの動きを同時に行うということは、マルチタスクとなりますので処理が動作の調整が複雑になります。重心移動を行いながら、左右の手に別々のタスクを同時に行わせるわけです。ですからこれを習得するには多少手間がかかります。但し、私たちは日頃から
- カバンからスマホを取り出しながら駅の階段を下りる
- シートベルトを掛けながら車のエンジンをかける
- エレクトーンでメロディーとコードを演奏しながら足でベースを弾く
もっと言うと、
- 一輪車に乗りながらのジャグリング
- カラオケを歌いながらの暗算
- ボールに乗りながらの両手での皿回し
などのタスクを行う人がいる以上、誰もがこれを行うことができる可能性を秘めています。
中国武術の練習でどのように3つの動きを意識するのか
中国北派武術では、動作を30~50個ほどつなげたものを套路と呼び、これにはいろいろな動作がパッケージングされています。一般的な北派武術の套路の中の招式を注意深く観察分析してみてください。ほとんどの動きが3つほどの動作の集合体として構成されているはずです。これを意識して中国武術の運動を行えば体は同時作業に慣れていきます。
「3つ以上の動作を同時に行う」これを意識するだけで中国武術の練習の効果は飛躍的に高まります。師兄弟同士で軽い手合わせをした場合、「当たらないな」などの疑問があった時には自分の動作を振り返ってみてください。
3つの動作というと、打撃の攻撃、防御面に意識が向きがちですが、極め、顔面フェイント、足刈り、という3つの動作を行うだけで人は簡単に倒れます。また右手で袖をつかみ、左手で首をヘッドロックし、片足で柔道の内またをかける、これを完全に同一のタイミングで行えば、これでも相手は倒せます。
まとめ
中国武術を考えながら練習することは、体の協調性を高め、操作性、追随性を上げる、つまり「運動神経」の改善やパフォーマンスの向上に効果があります。
上に出したものは一例にすぎませんが、マンネリ化を防ぐため、更なる理解を深めるために武術を練習する際には様々な角度から武術を捉え、試行錯誤をすることをお勧めします。思考しながら体を動かすことは、気分転換にもなればストレス解消にもなり、また伸び悩んでいる方にとっては一つの突破口となりうる可能性があります。
本日の記事が皆さんの中国武術ライフの参考になれば幸いです。