中国武術を練習している方で、空手や格闘技と併修したいと考えている方も多いかと思います。こちらについて考えてみましたが結論から言うと同時併修はお勧めしません。
同時併修はお勧めしませんが、時期を置いて違う拳種を習うことにより結果的に並行練習状態となるものについてはこの限りではありません。本日は中国武術の併修について解説します。
目次
武術の併修とは
武術の併修とは、中国武術や日本武道、格闘技などを同時期に並行して学習する事、練習することを言います。
併修をお勧めしない最大の理由
まず私が解説する併修をお勧めしない最大の理由は、武術や武道、格闘技はそれぞれ「思想が異なる」ことが挙げられます。異なる思想、体系には親和性の高いものもあれば、相容れないものもあります。
それを同時並行で学習し練習するということは、考え方を学ぶ中で多くの矛盾と直面する可能性があることを示しています。一つ少し誇大な例を挙げると、一神教が多神教を認めない、イスラム教が偶像崇拝を認めない、といったものです。
技術のみ追求する場合には、大きな問題は発生しないかもしれませんが、武術を深く追求し咀嚼し熟成させ、自分のものにした後、それを壊して新しいものを再構成していくという過程を経る覚悟で練習を行おうとする場合、併修の過程でその思想が衝突しあい、悩みが発生する可能性があります。
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併修のデメリット
武術を併修するデメリットを以下に説明します。
頭と体が混乱する
違う物を同時に習うと頭と体がそれらをうまく処理できず、混乱します。私は経験がありませんが、一つ例を挙げるとすれば、外国語を習得する際には、同時並行で異なる2種類の外国語を学習した場合、適切に処理し、区別し、両方が干渉することなく上達が行われるでしょうか?中にはそのようなセンスの持ち主もいるかもしれません。
ですが、私を含めた凡人にはそれをこなすのは現実的に難しいと思います。
リソースが分散し、両方中途半端になる
二種類以上の武術を追求しようとした場合、「二頭を追う物一頭を得ず」の状態になる可能性があります。つまり一種類に集中すべきリソースが分散してしまい、どれもこれも中途半端になる可能性があります。
練習の効果を打消しあう可能性がある
もし併修する2種の武術、拳種それぞれが相反する要素を持っている場合、ちょうどいい感じにお互いを打ち消し合ってしまい、効果がなくなってしまうことがあります。例えば、「力を抜くこと」を重視する拳種と「体を締めること」を重視する拳種を併修した場合には
このような現象が顕著に表れます。
類似しすぎるものは相乗効果を生まない可能性がある
全く相反する要素を持つものを併修すればお互いを打ち消し合ってしまいますが、逆に類似性が高すぎる拳種を同時に併修しても相乗効果を得ることは期待できません。おなじ様なことをやることになるだけで、短所を補うことにつながらないからです。
時間がかかる
サラリーマンの方でなかなか練習時間が取れない場合、一種類の拳種を極めるのにも相当時間がかかります。一般的にいっぱしの技術レベルに達するには10000時間をかける必要があるという「10000時間の法則」という物があるほどです。
これを2種類以上行おうとすると、フルタイムで勤務しながらやりこなすには相当な覚悟が必要です。実際に2種類以上を完全にものにすることは現実的には非常に困難です。
授業料がかかる
2種以上の武術を別の教室で練習する場合、月謝、講習費、授業料が2倍かかり、経済的負担になります。
併修を嫌う指導者がいる
武術や武道の教室の指導者の中には併修する生徒さんを快く思わない方がいらっしゃるようです。武術や武道に興味を持つ方は、いろいろなものを体験し、自分に合ったものを見つけたいという理由から、様々なものを習ってみる方もいます。他にも何かを習っているという話を聞いた途端、すこし難しい顔をされる指導者がいることは事実だと思います。
疲れる
2種類以上の武術や武道を併修すると、練習時間が多くなるか、内容が薄まります。一つを突き詰めるのと同等の濃度で複数の習い事をした場合、疲弊してしまう可能性が大きいです。
甲子園を目指す高校野球部と、サッカー部を掛け持ちして両方でレギュラーを保つのが困難なのと同じです。疲れるで済めばよいですが、疲労の蓄積で日常生活に支障が出たり運動障害が起こったら元も子もありません。
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併修のメリット
上ではデメリットを紹介しましたが、併修するにおいて多少メリットもありますので紹介しておきます。
組み合わせによっては相乗効果が出る
組み合わせる拳種によっては併修弱点を補い合う、またはお互いの長所を伸ばす、等のシナジーが生まれることがあります。例えばよく言われるのは、八極拳と劈掛拳の併修により短打と長撃の長所を混ぜ込みあうなどです。
但しこの場合、源泉に流れる基礎理論は北派武術として共通しているものであるためシナジーが出るのであり、システムをまったく異にするものが相乗効果を生み出すかと言われると未知数です。
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まとめ
同時並行で異なる物を練習することにはメリットよりも弊害が多いということが言えると思います。どうしても併修を行いたい場合は、完全に相反するものでもなく、非常によく似た者でもない、角度いうと90度程度方向性がずれたもの、を練習することをお勧めします。
多くの技術を習得したい場合は、同時並行で習い事をするのではなく、一定期間一つのものに打ち込み、それが成熟したのちに類似性はあるが、ちょうど良い相乗効果が見込める他のものを取り入れていく、または移転するという流れが最適だと思います。