中国武術を習うには、野外の公園で行う練習会、練習場を借りて行うセミナーや講習会、練習場を備えた武術教室、マンツーマンでの指導、現地での練習に参加、老師を招聘しセミナー開催等、様々な方法があります。
タウンページ、武道武術雑誌、インターネットの武術教室一覧や、教室のサイト、市町村の生涯学習セミナーや体育館の掲示物に至るまでなど武術教室はいろいろなところで見つけることができますが良い教室かどうかを外部情報だけで判断するのはなかなか難しいものです。
以前「中国武術の良い老師の判断基準」として老師の基準を紹介しました。
本日は私の過去の経験と独断と偏見を踏まえ、良い武術教室について解説をしたいと思います。
目次
良い武術教室の基準一覧
中国武術教室を選ぶに当たり、良い教室の判断基準となる一覧を以下のように考えました。
雰囲気が楽しい
教室全体の雰囲気が明るく指導者と生徒さんが楽しそうに和気あいあいとしたムードで練習していることです。威圧感があったり、威圧と緊張の中で練習している雰囲気があれば望ましくないと考えています。ただしその楽しいムードの中に溌溂とした雰囲気があればなお良いとおもいます。
交通の便が良いところにある
武術を定期的に習いたい場合、教室やセミナー開催場所が交通の便の良いところにあることはとても重要です。通うのに手間がかかる、時間がかかる、交通費がかかる、となれば人間は自然と足が遠のいてしまうものです。
但し、どんなに遠くても地球の裏側でも習いたいものは習いたい、と言う方もいます。または中国大陸や台湾地区へ通われている方もいます。もし指導者の都合で普段の教室が地方となってしまう場合には、交通の便の良いところで定期的にセミナーを開催してもらうのもありです。
幸い中国武術は動きやすい服装と体さえあれば公園でもどこでも練習できます。東京、名古屋、大阪、福岡等交通の要衝の大きな公園で指導されている教室を探すのもよいと思います。
きっちりとしたカリキュラムがあり目標が示されている
中国北派武術には概して基本的な練習カリキュラムがあります。一般的には、立ち方を覚え、支持力を練り、基本の動作を反復し、套路を習い、兵器を練り、対練を練り、それ以上の高みを目指すという順序です。これらの手順が具体的に示され、上達する方向性が示される教室は良い教室だと判断できます。
いろいろな人が来ている
いろいろなバックグラウンドの方、例えば年配の方、子供さん、子供の両親、シェイプアップを目指す女性の方等、年齢、性別の垣根を超えた様々な方が来られているところは練習生に多様性があり、教室はその多様性に対応したカリキュラムを持っていることを証明できます。
ある程度のリクエストに応えてくれる
基本的技術についてはカリキュラムに則り練習する必要がありますが、習いたい内容を強制されず、練習生の嗜好とリスエストをある程度考慮に入れ、カリキュラムを作ってくれる教室は良い指導内容を持っていると考えられます。
人間の嗜好、体格、運動神経、バックグランドはみな違うわけですから、工業製品のように誤差をなくした画一性を求めることはできません。なぜなら人間の個体それぞれがすでに個体差を持っているからです。
性格にあったものを選定してくれることを手助けしてくれたり、数ある選択肢の中からリクエストに応えてくれたりする教室は概して良い教室だと言えると思います。
悪い評判が立っていない
武術教室を探す場合、現在はインターネットで教室の情報収集を行うのが一般的です。この場合、インターネットには良い評判悪い評判が匿名でアップされています。様々な評判がアップされその中で様々な憶測が飛び交っていますが、そのような場合、悪い評判がなさそうなところを選ぶのが無難です。
社会的地位のある人が練習に来ている
練習生の中に、士業や社会的ステータスが高いとされる方がおられるところも良いと思います。そのような方は社会経験が豊富で指導者や組織の雰囲気を判断する目が養われており、社会性がある方が練習に参加しているということは、その教室が健全な組織であることを表す一つの指標になりえます。
主修の門派がある
様々な門派を看板に掲げている教室もあります。全体的に高いレベルでまとまっていれば全く問題がないですが、中には套路をかき集めてきただけの教室もあるかもしれません。このような場合はあまりよろしくありません。
多くの套路、拳種を学べる教室であっても、主修の門派がある教室で練習すれば、理論、思想、套路の背景にある歴史などまで学ぶことができ、深い理解を得ることができます。
先輩の風格に統一感がある
中国武術教室の先輩の動きに注意してみてください。皆さんの風格に統一感があるかないかは、指導者の素質を表す一つの指標となります。練習者の中には一定の風格を乗り越え、自分の進む境地を目指している方もいるかもしれませんが、中級者の動きに統一感があれば整った規格で指導が行われていうことがわかります。
授業料が社会通念上の常識的な値段である
中国武術は趣味であり、習い事です。練習生にとって授業料も気になるところです。民間のスタジオを借りるか、市営体育館や武道場を借りるか、公園で練習するか、自宅の練習スペースで指導しているか、武術教室の規模、設備の充実さ、個人指導かどうかにもよりますが、授業料が習い事して社会通念上常識的な者であることも武術教室選定の重要な項目になります。
週一回~2回のコースでは一般的に一か月で6000円~10000円が中間値ではないかとおもいます。個人レッスンの場合、指導料は団体コースより高く設定されるのが一般的です。
練習場が清潔
清潔な練習場は通う武術教室を決めるうえで決定的な要素の一つです。できれば更衣室、清潔なトイレ、シャワー室などがあることが望ましいです。教室主催者は、自分の教室を多くの愛好家に選んでもらう上で清潔感があり衛生的なスペースであることに十分配慮をする必要があります。
屋内の練習場の場合、清浄で快適な空気の品質を確保するためには空調設備が整っているほうがよいでしょう。野外の場合は、雨天での練習場所、日差し、空気の品質や騒音などを考慮し練習に集中できる環境が好ましいです。
安全に配慮がなされている
練習カリキュラムと環境と設備に安全配慮が行き届いていることも確認隙重要事項です。健康になるために、自分の自己実現を高めるために授業料払って習い事に行っているのに、怪我をしてしまうなら、何をしているのかわかりません。
- 「また武術であるからには多少のケガはやむを得ない」
- 「武術にケガは付き物である」
- 「ケガするのは練習生の不注意であり集中力が足りない」
といった時代錯誤で下品で野蛮でレベルの低い指導者がいる限り、中国武術の発展はあり得ません。
少なくとも私は中国武術を指導する上で、翌日以降後遺症が残るような障害を負ったり、負わせたことは一度もありません(軽微な筋肉痛は除く)。
「安全配慮義務」がしっかり周知されていることを第一優先として確認しましょう。
老師が品行方正であること
武術教室の老師には、品行方正で誠実な風格があることが望ましいです。そのような教室には、老師の徳により良識ある練習生が多く集まり、評価が高く健全で効率的な運営がなされます。
指導者が個人崇拝の対象になっていない
指導者が練習生から個人崇拝の対象になっているような教室は避けたほうが良いです。個人崇拝は客観公正で理性的な判断能力とトレードオフです。指導者と生徒さんが一人の人間と一人の人間との間で平等な立場で接していることは重要です。
老師も一人の人間ですが、練習生に対するえこひいきがあったり、気分で取り扱いが変わったりするところは避けた方が無難です。
個への対応がしっかりしている
武術教室で重要なのが個への対応です。一般的に中国武術の練習は団体練習の体制を好みません。始める時期がばらばらで、体格と素養、体力、運動神経、年齢、性別、民族的背景が異なる練習生が画一化されたカリキュラムを同じように進めていくことは難しいからです。
個人個人に最適なカリキュラム、教材、運動強度を与え、個人のリクエストと質問にも誠実に答えてくれるシステムがあれば自分のペースで安心して練習を続けることができます。
自分のペースでの練習が許容される
既婚でお子さんがいらっしゃる方、仕事が忙しい方、遠方から来られる方でも生活や仕事の都合に合わせて練習することが許容される教室は良い教室です。
本来、中国武術は個人個人がそれぞれのペースでやりたいように練習するのが最適です。
- 間を開けずに練習に参加することを強く求める
- 用事を断ってでも練習を優先させる
等は、指導者側の都合しか考えない非常に器の狭い考え方です。途切れ途切れになっても練習を続けたい、新しいものを習いたい、武術の奥ゆかしさに触れたい、という生徒さんの気持ちを最大限に尊重し、才能を伸ばす手伝いをするのが指導者の役目です。
まとめ
本日は、中国武術教室を探すうえで参考にするべきポイントをいくつか紹介しました。中国武術の練習のスタイル、指導者の思想は様々ですので相性は存在します。
まずは、教室に連絡し、見学か体験を申し込んでみてください。楽しいな、心地よいな、ここならいけそうだな、と思えば続けて練習に参加していけばいいですし、なんか合わないな、続くかどうか自信がないな、という割とネガティブな気持ちが出る際には、無理して続けてもよろしくないと思います。
皆さんのフィーリングがあったところで長く練習し、功を付けていくというのが大事なことだと思います。
本日の記事が皆さんの武術教室探しの参考になれば幸いです。