中国武術

中国武術が苦戦する環境と条件 ~中国武術が苦戦を強いられる環境と条件~

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最近いろいろな武術、武道の成り立ちを調べているうちに、武術、武道には環境としての得手不得手があることに気が付きました。これは中国武術にもあるのではと思い、中国武術が苦戦する環境を列記しそれを解説することにしました。

中国武術が苦戦を強いられる環境

中国武術が苦戦を強いられる環境は以下の通りです。

地形が複雑

中国武術、特に中国北方武術が成立した地域は河北省、山東省、山西省、河南省、陝西省など華北地方や中原とその周辺地域です。おおむね黄土に覆われた平地が多く険峻で複雑な地形の場所は限られています。

中国北派武術の姿勢は歩幅が広く、動作が大きく、跳躍技法が多彩で広い場所を使って動き回る套路が多い傾向にあります。このような武術は広い平坦な場所では有利ですが、地形が複雑で険峻、狭く傾斜の多い場所には適していません。障害物がおおい場所や天井が低い屋内にも不向きです。

ですから中国北派武術と対峙する際にはできるだけ狭いところに誘い込めば戦況を有利に運べるかもしれません。

地面がぬかるんでいる

地面がぬかるんでいる所は中国北派武術にとっては苦戦を強いられる場所です。

中国北派武術の歩幅は大きく歩法は往々にして軽快ですがこれは地面が滑らないことを前提にして発達した体系です。大きい歩幅と軽快な歩法は、例えば粘土質の土壌でぬかるんだ田んぼ道のような場所では滑りやすく踏ん張りがききません。

中国北派武術また片足を高めに上げる腿法が多いですが、これもぬかるんだ地面ではスリップしやすい技法であり、適していません。雨が多く、土壌が湿り、ドロドロの場所ではなかなか本来の技法を発揮できません。

沼沢地

中国北派武術は膝まで泥に浸かるような沼地、沼沢地では極めて不利です。靴が脱げてしまい蹴りが使えないこと、歩法が制限され霊活なフットワークが使えません。足を取られてしまうようなぬかるみのフィールドを中国北派武術は想定していませんん。

船上

中国北派武術は船上のような床面が揺れる場所を想定しません。地面は平らで凹凸がない場所であることを想定し動作が設計されており、ゆらゆらと揺れて床地面が傾く場面においては苦戦を強いられることになります。

高温多湿

高温多湿の環境は中国北派武術が苦戦を強いられる環境です。中国北派武術は降雨量が少なく冬季に寒冷な中国北方で発達した武術体系です。

大きな動作で姿勢を低くして打つ門派が多く、全身運動となるため歩幅が狭く姿勢が高い武術と比較して体力の消耗が大きいことが特徴です。

中国北派武術だけが全身運動であるというわけではなく、中国北派武術は大きな歩幅で跳躍技法や腿法を多用するため消耗する体力が多いということが言いたいわけです。

消耗が激しい動作は体温が上昇しやすくたくさんの汗をかきます。高温の地域、湿度が高い環境でこの運動を行うとバテやすいです。

高温多湿の環境では消費体力が少ない効率的な動き(全身の動作の総計)が少ない武術のほうが有利であると考えます。

狭い室内

狭い室内という環境は中国北派武術の技術が生かせない環境の一つです。中国北派武術は動作が大きく、跳躍技法などがあり、大地を縦横無尽にどうする技術体系です。

ですから狭い所、特に天井や壁、カモイ、柱で動作が阻害されたり邪魔される座敷のようなところは苦手です。

裸足

世界には裸足で生活する民族、靴を脱ぐことが多い民族がいます。日本人も座敷に上がったりするときは靴を脱いで靴下や足袋、裸足で生活をしています。畳の上でなくても室内では靴を脱いでスリッパに履き替えたりもします。

中国北方人は靴を履いて生活し、炕(オンドル)の上や寝具の上以外では靴を履き続けます。中国武術もそのような服装をしている前提で技が設計されています。つま先蹴りがあるのも靴を履く習慣と関係します。

中国武術の動作を裸足で行えば、足の指は骨折し、足の裏の皮はむけてしまい、技術体系の優れた部分を生かすことができなくなります。靴を脱いだ状態、というのは中国武術が直面するきわめて不利な状況の一つです。

訓練された集団との戦闘

近代の民間伝統武術は個人単位での技撃を行うように設計がなされており、集団で役割を分担し戦闘を行うために作られたものではありません。

近代武術の技術体系が成立した時代はすでに後装式の銃が配備された状況であり、軍隊の戦闘形態は、航空機こそ実用化されていないものの、砲と銃であり白兵戦や騎兵突撃が時代遅れになっていました。

戦争は近代装備と近代的軍事技術で訓練が行われた専門の統率者と兵士が行うものであり、伝統武術は軍事技術としてはすでに時代遅れになっていました。

当然のことながらよく訓練された軍隊に対し近代武術の技術をもって対抗したところで全く太刀打ちができないことは明白です。中国の民間伝統武術は集団戦術という状況を考慮に入れていないのでよく訓練された兵士との戦闘では当然のことながら苦戦を強いられます。

中国武術が苦戦する環境と条件のまとめ

今回は中国武術が苦戦する環境と条件を紹介ました。世界には様々武道、武術、格闘技、護身術がありますが、技術体系が出来上がった背景やルール、想定する環境は異なります。

中国武術には中国武術が想定する環境があり、同時に想定していない環境もあることは事実です。

ブログやメディアではその技術の強みに焦点をあてて解説がなされることが多く、苦戦する環境について論じられることは少ないように感じます。

ですが相対的に存在する苦手な環境や条件というものは往々に存在します。今回は私が練習している中国武術についてそれらをリストアップし解説しました。

練習する際には練習する技術の強みを理解するとともに苦戦する条件も理解しながら練習をしていただくと理解が深くなり、それが技術の向上に寄与します。

まずはご自身が練習されているものからさまざまな考察を行ってみてください。

このブログが皆様の中国武術の修練の参考になれば幸いです。

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