皆さんは中国武術を練習するにあたり何名かの師についていますか?私は中国武術を学ぶ際に師事して学んだといえる老師は2名おり、ほかにも何名かの老師に指導を受けています。
一人の師についたらその老師について学び続けるべし、という考え方がある一方で多くの老師に就いて見識を広めたほうがいいという考えもあります。

私は中国武術を学ぶ際には多くの老師から様々なものを学び、それらを比較し、対比し、
様々な角度から捉えつつ技芸のレベルを向上させるのが良いと考えます、
今回は、中国武術において複数の老師に就いて武術を学ぶメリットなどについて解説します。
目次
複数の老師に学ぶメリット

複数の老師に学ぶメリットは以下の通りです。
多角的な考え方ができる
中国武術の老師はそれぞれが自分の系譜と経験によってそれぞれに考え方を持っています。
老師によって考え方、捉え方は異なります。
一人の老師にしか就いていないとその老師の教えが絶対だという錯覚を受けやすくなります。ですが複数の老師から武術を学んでいれば、より多角的に武術を捉えるができるようになります。
広い知見が得られる
中国武術を指導する老師はそれぞれが豊富な指導経験、中には実戦経験をもった老師もいます。一人からは一人分の知見を得ることができます。ですが一人の老師から得られる知見はその老師自身のものでありそれ以上の広がりを持つものではありません。
複数の老師から学ぶことにより複数の目線からの知見を学ぶことができ、学べるものに広がりが出ます。
未履修の部分を埋めることができる
複数の老師から学ぶことで一人の老師からは学べない部分を埋めることができます。老師はそれぞれ分野に得意不得意があり、すべてにおいて万能な人物は稀です。
一人の老師の不得手な部分を他の老師から学び補うことにより空白部分を埋め合わせることができます。これによって武術が全方向型に適応したものになります。
複数の老師から学ぶ際の注意点

複数の老師から学ぶ際には注意点もあります。複数の老師から学ぶ際の注意点には以下のようなものがあります。
相反する教えを聞くことがある
老師はそれぞれの自身の経験、知見、思想、哲学を持っています。複数の老師から技芸を学ぶとそれらに相反する内容が含まれていることがあります。
教えの中で矛盾、相反する教え、たとえば老師A「相手が攻めてきても退いてはいけない」老師B「相手が攻めてきたらこちらはその分退けばいい」等々です。
相反する教えを受けその整合性に悩む人がいるかもしれませんが、悩む必要は全くありません。その人はその人の教え、別の人は別の教えを持っている、と認識してその整合性を自身でとれば問題ありません。
私自身も過去多くの老師に教えを請いましたが、それぞれがそれぞれの考え方を持っており、違うことを考え方を習いました。
打ち消しあいが起こる
もし複数の老師がそれぞれお互いに完全に相反する教えを持っていた場合、学ぶ内容に打ち消しあいが起こってしまいます。
例えば、「力を入れろ、力め」「力を入れてはいけない、力むな」という相反する教えがある場合に、学生はどちらの教えも受けることになり、結局どのようにすればいいのか非常に悩むことになります。
最悪の場合、教えを教えで打ち消しあい、ものにならなくなるという状況が発生します。
時間の配分の問題
複数の老師に就く際に考慮しなければならないことは、時間の配分です。2名の老師に習うと普通に時間は2倍取られることになります。
生活や家庭を維持しながら一人の老師に一種類の武術を学ぶだけでも大成しようとおもうとなかなか大変です。複数の老師に就いて学ぶには相応の時間を確保して臨む必要があります。
学費がかかる
複数の老師に教えを求めると一人の老師だけに習っている場合に比べて学費が多くかかります。n人の老師に学んでいる場合、一人の老師の時よりもn倍の学費がかかります。ですから潤沢な余裕資金を日ごろから準備しておくことをお勧めします。
ひがみやっかみ
複数の老師に就いていると「あいつは〇〇のところにも出入りしているいけすかない奴だ」とか、そういう反応が出てくる場合があります。
これはひがみややっかみなど様々な人間の感情が引き起こすことです。老師自身がそのような感情を持ったり、一門の誰かがそのような感情をもったり様々です。
ただし、誰かが否定的な意思を持つこと程度のことで、より大きな期待値が得られる意思決定を放棄するのは愚かです。
誰か一人でも否定的な意見がある場合行動を起こさない、というやり方は、振り返って自身の意思決定の妥当性を顧みた時に往々にして後悔の念につながります。
否定的な意見を持たれる以上の利得が得られるようであれば否定的な意見は拝聴しておきつつ、自身が信じる道を進むべきです。
複数の老師から学ぶ際に発生する問題の回避方法

ここでは上で記述した複数の老師から学ぶ際に起こりうる問題を回避する方法について論じます。問題を回避する方法には以下のようなものがあります。
練習する時間を確保する
複数の老師に技術を学ぶ場合単独の老師から単独の技術体系を学ぶ場合と比べて多くの時間が必要になります。
複数の老師から学ぶもの技術水準を確保するためにはまずは時間を確保しましょう。練習時間を阻害するものの代表的は対象は労働に要する時間です。
- 職場へ通勤時間を短くする
- 短時間勤務の仕事をする
- 役務や時間を提供するというやり方以外の働き方で金を稼ぐ
等いろいろな方法で時間を確保してください。
学ぶ時期を分ける
複数の老師に武術を学ぶという場合、同時並行で学ぶ必要はありません。
まずは一人の老師から学び、その後段階を経て別の老師に学んでいく、このようにすれば練習と研究の時間を分けて練習ができます。
まずは一つのものを消化して自分のものにしてからさらにレベルの高いものを別の老師から学ぶ、このようにすれば時間や労力の配分の合理化と頭の整理がしやすくなります。
学費を準備しておく
複数の老師に武術を学ぶには複数分の学費が必要です。それがなければ「お金がないから学べない」という悔しいことになってしまいます。
ですから複数の老師に学費を払っても生活費を圧迫してしまわないよう潤沢な資金を準備しておきましょう。資金を準備する方法は何でも構いません。
別の老師に就く目的を誠意をもって説明し了解を得る
もともと一人の老師に就きながら同時に別の老師に就こうとする場合には、もともと就いている老師から小言を言われることがあります。
その際には、別の老師に就く目的を誠意をもって説明し、もともとの老師の了解を得ておくのが良いと思います。
私の体験談

私はこれまで青島国術館系の山東武術や程派八卦掌、尚派形意拳、五行通背拳を練習してきました。これまでの武術を練習してきた28年間に就いた老師は一人だけではありません。
私の場合、同時並行して複数の老師に就いて学ぶと頭の中が混乱すること、技術体系が混合すること、整理と復習の時間が取れないこと等の理由から、時間を分けて学ぶようにしてきました。
山東武術の老師には長らく就いていましたが老師が亡くなったのを機に五行通背拳、それから程派八卦掌へと重複しない形で武術の学習をしていた、というのが私のやり方です。
もちろん、時間や意気込みがあれば、複数の老師に同時に就いて並行して学習することで
一定の時間で2倍以上の内容を学習することができますので限られた時間内に多くのものを吸収したい場合はこの方法もお勧めです。
複数の老師に就いて武術を学ぶことのまとめ

今回は複数の老師について武術を学ぶメリットや問題点とその回避方法などを解説しました。私自身、これまで複数の老師に就いて中国武術を研究してきました。一人の老師に就き、一生涯その武術を研究し練習される方もいます。
私は様々な知見を得、一人の老師からでは学べないものを埋める目的で複数の老師に就くことを推奨しています。
老師と言っても人間です。一人の老師から学べることは中国武術全体のごく一部にすぎません。複数の老師から学び、相乗効果を得る形で昇華させれば、技芸はさらなる高みに上っていきます。
皆さんも多くの老師からたくさんの技術を学び、良いものに接してください。複数の老師に就いて知見を得て、ライバルに差をつけよー。
このブログが皆様の中国武術研鑽の参考になれば幸いです。
