皆さまいかがお過ごしでしょうか。お盆が過ぎても暑い日が続いています。田んぼの穂は黄金色になり、赤とんぼがその上を飛び交っています。季節はそろそろ秋に差し掛かろうとしております。
さて、本日は、中国武術の練習について考えるというシリーズで、套路について私の考えを紹介しようと思います。中国武術には套路という日本の武道で言うところの型のような練習方法があります。
中国北派武術の一般的な練習ステップとしては、まずは基本の立ち方や拳打、腿法を学びこれらを一通り習得したら、套路を練り始めます。套路を練らない門派もあります。
套路を新しく覚えることは楽しいものです。中には何十もの套路を習ったことがある方もいらっしゃるでしょう。套路を集めるのは楽しいものですが、中国武術の練習過程において、套路を練ることは最終目的でも何でもありません。套路は中華武藝としての高みを目指すうえでの一つの過程であり「きっかけ」です。
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套路とは
套路とは一套一套のセットの動きを路のようにパッケージングしたものです。套とはセットのことです。つまりセットを路のつなぎ合わせたもののことを言います。套路には門派それぞれの思想、技撃戦略、応用へのヒントが詰まっているとされています。
套路には、門派の独自性を強調するため、始まりと終わりを表現するために、起式と収式が
付け加えられてあります。
套路の動作は30動作~60動作が一般的であり、普通の速度で練った場合、1分程度で練り終わるように構成されています。ゆっくりと練る門派では当然それに合わせて時間は長くなりますし、その反対もあります。
套路において、移動する経路でもっとも多いものは、左に向かい一直線に移動した後、右に向きを変えて元の位置を行き過ぎては反転し、それを数回(4回程度)繰り返したのち、始めの位置に戻るというのが最もオーソドックスです。
套路と型の違い
中国語では「型」は「外観、形状、形式」つまり、「静止した物体の形状」を表す名詞です。そこには順序や動作、何かの過渡的な意図を含めるものではありません。
套路には「静止した物体の形状」という意味合いは全くありませんので、同じように振り付けをなぞりながら順番通り恰好を付けて言っている様でも、発想は全く異なります。
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中国武術での套路の練習方法
中国武術では、その一套一套のセットをつなぎ合わせたものを教材として利用し、反復練習に活用することが多く行われます。
中国武術では、この套路を基本的な用法を学んだり、身体操作を慣熟させたり、動作の連続性を練ったりということに使います。反復して一套路を練れば、一般的な中負荷程度のスポーツと同様程度の心肺機能の強化が図れます。
また套路の一部分を抽出して練習すれば集中的に動作を訓練できます。套路によっては左右の動作を対称に構成しているものもあれば、左右非対称の動作が多いものもあります。一般的には套路は左右非対称のものが多く、右利きの人間が動きやすいように作られています。
練習では、頭の体操、体の協調性の訓練として、套路の動作を左右を反転させものをやってみるのもいいでしょう。
套路には用法を重視したものもあれば、身体操作の向上を目的としたものもあり、「戦闘技術が凝縮されている」と言い切ることはできないものです。套路の内容を理解するには、その套路がいつ、どこで、誰によって、どのように、どうやって作られたかを研究する必要があります。
また套路を構成する各動作は、創作者の才能、思想、特徴、体格及びその套路が編纂された地方の文化、気候風土、時代背景の影響を受けます。
套路は、過敵応用を考えるきっかけにもなり、体操的に体を動かす運動にもなり、骨格や筋肉を健全な状態に保つための教材にもなり、さまざな用途に応用できるものです。
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套路の成立
套路の成立過程は確かなことは言えないですが、集団で軍事訓練を行う際には、套路を練ることは都合がいいことから套路を練るという練習体系はかなり古くからあったと考えていいと思います。但し、現在伝わってている套路が古くから伝承されて来たものかどうかはわかりません。
多くの門派の成立は明代以降、特に清代末期に集中しており、套路もその時代に編纂が行われたと考えるのが妥当です。套路は自然発生的に発生し、古代から受け継がれたものというより、誰かが人為的に考案した無形人工物であり、人間が創作した産物です。
肖像権や著作権、知的財産権が公的機関で認定されているものでもありませんので誰でも練習でき、改編でき、ゼロから作ることもできます。
私個人は、故人の知恵と考案者に敬意を表し、あまり改変することは行いませんし、套路を指導する際には、できるだけ自分の味を排除し、オリジナルを尊重したバージョンを指導するようにしています。
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套路の改編について
私は套路の改変について上述の理由から套路の改変はあまり行いませんが、套路の改変と創造自体に否定的か感情は持っていません。古臭いものにしがみ付き、古を懐かしみ時代に取り残されるより、どんどん化学変化を起こしていくべきだと考えています。中国武術の多様性はこれからもどんどん進んでいくと思います。
世の中では、過去の常識を覆す文学、音楽、工芸作品が生み出され続けています。中国武術もこの自然な流れに取り残されてはいけないと考えます。
但し、中国武術にはその中に脈々と流れる原理原則があるため、中国武術の理をどれだけ理解し深く消化しているかにより、套路を改編する場合、新しい套路が考案場合には、その成果物には良し悪しが出ることも事実です。
私の場合、上のような全体像を見据えつつ、現在は故を温め新しきを知るという段階を歩んでいる最中です。
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まとめ
套路には物質の外見的形状という意味合いは無いため、普通に考えれば套路により套路の枠に嵌められてしまうということは起りえません。
多く中国武術が套路を持ちますが、套路を持つことが中国武術の核心的特徴であるということもありません。套路自体はただのセットセットの動作の羅列に過ぎません。套路を練る人間が套路に活きた価値を与えます。
套路は中国武術を理解し、ステップアップするための一つの教材であり、過程であり、四角い枠に捕らわれずに高みを目指すための一つに「きっかけ」にすぎません。
套路を「活きたもの」と考え、套路を人間が主体的に活用し、中国武術の上達の道のりを愉しんで参りましょう。