前回、中国武術の弱点の考察をブログにしました。今回は中国武術の長所について論じたいと思います。
これまで断片的に中国武術の長所を語ったことがありましたが今回はそれらをもう一度まとめて解説します。
いつも通りのことですが「健康維持に効果がある」や「アンチエイジング」、「用法がある」のようなどこの武術武術でも多かれ少なかれあるような一般的なもの極力省き、中国武術特有の長所について焦点を当てます。
中国武術の長所
中国武術の長所には以下のようなものがあります。
武器との統合
中国武術は徒手技術と武器術が融合した技術体系を持っています。武術、武道の世界ではこれがよくあることなのでこれが中国武術の特別な兆候であるということはできませんが、事実としてこれはあります。
拳術が武器術の縮図であり、武器術は拳術の延長です。棍、槍、刀、剣、そのた奇門兵器にも例外はありません。得物を持ち帰るだけでいろいろなものを使え、何も持っていなくてもそれは武術となります。
私が練習している北方武術でも例外的に刀術のみの門派、拳術のみの門派もあると聞いたことはあります。
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まあまあオールマイティー
中国武術の体系はまあまあのオールマイティーさを備えています。
兵器、徒手、養生、哲学の概念を備え、技撃に関して言えば、寝技に関しては心もとないですが、拳打、脚撃、肘、膝、頭突き、つかみ技、体当たり、投げなどが含まれ、相手は同じ民族とは限らず、一対一とは限らない、という背景を考慮したものになっています。
練習にかける時間と労力が分散してしまう分特化した技術としては分が悪いですが、まあまあカバー範囲が広いものと言えます。
割と技術志向
中国武術は筋力、体格、持久力、体重、パワー、スピードよりもやや技術重視です。
それらを軽視しているわけではありませんが、どちらかと言えば比較的技術を重視するということです。筋力と体力でごり押すようなやり方をあまり好みません。
体重の割にマシ
人間の格闘能力は運動神経が良く、体格が大きく、体重が重いほうが有利であり、筋肉量を増やしたり、食事のコントロールで体重を増やしたりすることがあります。
相撲は体重別の競技ではありませんので体重が重いほうが有利であるといわれています。
中国武術については、基本からしっかり取り組めば、もともとの身体能力や体格、体重の割にはややマシな格闘能力を手に入れることができます。
もちろん超人的な能力、圧倒的な能力を得ることはできませんが、何もしないよりはマシな程度にはなるということです。運動神経、体格、体重、年齢が全く同じという条件(現実的にはあり得ませんが簡素なモデルとして)で比較しややマシなものが出来上がります。
ですから体格的にがっちりして骨太の体系でなくても精錬された技術を身に着けることで体重の割にはやや有利な立場を得ることができるとされています。
身体能力が磨かれる
どのようなスポーツ、運動をしても身体能力は磨かれますが、中国武術は通常行うスポーツと比較してより繊細な身体能力の向上が図れます。
それは中国武術が術理において精密な動作を要求するところにも表れています。
体系化された理論がある
中国武術は動作、姿勢、練習の心得として体系化された理論があります。これは近代的なスポーツにはあまり見られない特徴です。体系化された理論は、高学歴の方、知的好奇心の多い方をも魅了されるものになっています。
負荷の分散
中国武術の特徴の一つとしては全身への負荷分散ということが挙げられます。筋肉が出せる力はおおむね筋肉の断面積に比例するといわれています。
中国武術は断面積の大きい筋肉に大きな負荷をかけ、断面積の小さな筋肉への負荷を小さくします。その結果、負荷が全身に比較的均等にいきわたり、負荷の分散と平準化が行われます。
他の武術や武道でも効率的な動作を標榜しているものは多かれ少なかれこの概念を採用していると思いますが中国武術は比較的系統立てた理論でこれを実践します。
具体的に申し上げますと、筋肉が太い腿やいろいろな筋肉が集まり合計の筋肉が大きな力を発揮できる胴体に負荷をかける形をとります。
養生との結合
中国武術の特徴として挙げられるのは武技と養生の結合です。技撃性のある動作の練習と体力増強の両立はどのような武道、武術でも語られるところだと思いますが、「養生」(体をいたわり調子を整える)ことと武技が論じられ、語られる武術はよく考えれば多くはないと思います。
高強度の練習を行えば護身術として成立し、養生を目的として負荷を抑えて練習すれば、虚弱な体質からの体力の増強、病気で衰えた身体能力の回復、老化に伴う体力低下の抑制が行えます。
いつでもでこでも練習できる
中国武術のいいところはいつでもどこでも練習できることです。服装は自由で靴を履いた状態で動くように設計されています。つまり現代の私たちの常の姿です。特別な練習場も練習着も不要です。生きていればそれがそのまま武術の練習になります。
中国武術の長所のまとめ
今回は中国武術の長所について解説しました。長所というものの、実用性がある、健康維持に良いといったようなごく一般的なものや、他とも共通性があるありきたりなものは省略しています。
孫子の兵法にも「彼を知り己を知れば百戦殆からず」とある通り、自身が練習しているものの強みと弱みを分析して認識することは重要です。優位な部分、劣る部分を認識しそれを回避する、克服する、そのままにする、などしつついろいろ研究と試行錯誤を行ってみてください。
今回のブログが皆様の中国武術研究の参考になれば幸いです。