中国武術

内家拳と外家拳 ~外家と内家の区分の実際~

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中国武術には内家拳と外家拳という分類の概念があります。

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一般的には中国武術業界では、太極拳、形意拳、八卦掌を内家拳としそれ以外を外家拳とするという大まかな分類がなされています。これは武術を深く理解しない人が表面的な風格や技法のみをみて行った分類であることから

現在はそれほど重視されない概念であり、私自身もこの分類方法については現実的な認識との乖離があると考えています。本日は内家拳と外家拳について解説します。

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外家拳とは

雲崗石窟寺院雲崗石窟寺院

筋骨、体力を練り、体を外面から強くして剛力を用いる武術を外家拳と人は分類します。

外家拳は鍛えぬいた肉体から生み出される筋力で技を打ち出していくため筋肉、骨、皮膚などを直接的に鍛錬します。よって体躯の発達により強さが増すことから実用的な技量の向上が早いことが特徴です。

内家拳とは

中国の寺院中国の寺院

呼吸や意念、内功にて体を操作することを重視する武術を内家拳と人は分類します。

内家拳では筋骨といった物質的、肉体的な力よりも内面から発せられる概念に重きを置くため上達するまでに時間を要します。内家拳の太極拳、八卦掌、形意拳が代表拳種とされています。

武当派と少林派

中国の寺院中国の寺院

武当派とは道教の聖地のひとつとされる武当山で創始されたという伝説を借用しているため武当拳ともいわれるものです。

少林拳に代表される外家拳と比較すると歴史が比較的新しく、剛の勢を持つ少林拳に対抗するために張三豊という道士が創始したという伝説をくみあわせて武当派と称したと思われます。

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内家拳と外家拳の実際

中国の道観中国の道観

外家拳でも柔らかい風格を持つ門派もあり、内家拳でも剛の風格を持つ門派もあり外見の柔らかさだけで判断することはできません。内家拳でも筋骨の強化は行いますし、外家拳でも意念を重視します。

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誰が内家拳と外家拳という分類を考えたのか

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内家拳と外家拳を始めに誰が分類したのかを調査してみましたが、確たる資料を調べることはできませんでした。但し、1928年に中華民国の首都南京で設立された中央国術館には、
少林門(外家拳全般)と武当門(太極拳、八卦掌、形意拳)の二学科があり区別されていることから、当時から外家、内家の概念は確立していたと考えるのが妥当です。

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内家拳と外家拳の境界線とは

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それでは内家拳と外家拳の明確な境界線とは一体どこにあるのでしょうか。一般的には内家三拳(太極拳、八卦掌、形意拳)が内家拳、それ以外が外家拳と言うように門派により境界線を設けることが一般的ですが、実際に拳を練る身からすると内家拳と外家拳の間には主観的には明確な境界線はありません。

内家拳の練習では、比較的初期段階から意念や呼吸などの概念の重要性を学びます。しかし内家拳でもまずは形を作り動作に耐えられる筋骨を作る部分は外すことはできません。特に下盤にかかる負荷はかなり大きく、脂汗がでる訓練をしなければなりません。この時点では内面を顧みる余裕は殆どなく、概念的には外家拳的練習をしていると言えます。

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外家拳ではまず筋骨を練るところをしっかり作りこみます。排打功という打撃による耐性を上げるための練習を取り入れる門派もあります。但しこれは内功とセットで練るものであり、ただ筋骨を強くするため、やせ我慢をしているだけというものではありません。

外家拳では意念の操作などの概念をやや後で学ぶことになります。ただし呼吸や意の重要性は内家拳とそれほど変わるものではありません。

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わたしの武術の変遷

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私が中国武術を始めたときに、最初に習った練習内容は簡単な突きの動作と立ち方でした。
そこから套路を練り、用法を考えたり、様々なものを練習しました。

練習を始めて10年ほどたったころから技撃性を求めることから少しづつ体を如何に効率的に動かすか、呼吸や意念の操作と中国哲学の融合等を考えるようになりました。

私は外家拳から中国武術の門を叩き、今は八卦掌を中心に練習しています。動的練習をせず
呼吸法や打坐のみの練習とすることもあります。このように私の練習カリキュラムも時を経て変化しています。

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まとめ

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本日は中国武術の内家拳と外家拳について解説しました。

内家拳、外家拳は研究者が便宜的に分類をしただけで本来このような分類はありません。武を練る者の当事者にもありません。内家拳と外家拳はまさに武を練る者の意識の問題と練習過程における内外の比率の問題にすぎません。

中国武術に限らず、すべての運動やスポーツには、フィジカルな部分とメンタルな部分があり、前者は筋力の向上、技術の向上があり、後者には、意欲、戦略、集中力、緊張と覚醒などの精神部分の概念があります。

段階が上がれば鍛錬に占める筋骨に関わる比重が下がる傾向ため、内家的になる傾向があります。また高齢になってもその傾向があります。またそれらは個人の価値観でも変化します。

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