中国武術

中国武術の弱点 ~中国武術の弱みとは~

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皆さんは中国武術は実践的、ルール無しの状況に強い、健康効果が高い、総合武術である、など武術の優れた特徴を聞いたことがあると思います。これだけきいていれば、中国武術は最強で万能であると思ってしまいそうですが、現実にはそのようなものはありません。

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人間の性として自分が練習しているもの、習っている事柄にブランドやプライドを感じて優れた部分のみを語りたい気持ちはわからなくはないです。ですが、優れたところを知るには、そのものの弱み、弱点をも把握することが必要です。

今回は中国武術の弱点にあえて焦点を当てて解説します。

中国武術の弱点

中国の風景中国の風景

中国武術の弱点、弱みとしては以下のようなものがあります。

突出した部分がない

中国武術は徒手技術のシステムには(手技)、踢(蹴り)、摔(投げ技)、拿(極め技)があり、また冷兵器(火薬を使用しない)を操る技術をも含んでいます。動作のイメージとしては自分の背面に対応した部分もあり、かっこよく言えば全局面型の武術になります。

その代わり、これぞという抜きんでた部分がない、それが中国武術の弱みです。「いや、そんなことはない、中国武術は勁の威力に優れている」という方もいるでしょう。

ただしそれが本当に他の格闘技や武道と比べて客観的な基準を基にして優れているかという点について私は疑問です。

これだけいろいろなカリキュラムを練習しながら尚他の格闘技と客観公平公正に比較してと突出した技術を構築できるかは、私個人としては疑問です。

練習時間が分散する

中国武術は徒手技術から冷兵器、養生術、哲学までをカバーする技術体系ですが、習得内容が多岐にわたるため核心技術を練るにしても練習時間が分散してしまう傾向があります。

実用面を考えると自分がもっとも得意とする技術で勝負をつけたいところですが、もっともとびぬけた部分がなく平均的であれば、全体バランスは悪いが突出した技術を持つものの後塵を拝することになってしまいます。これが中国武術の弱点といえます。

一対一では不利

中国武術の技術体系は基本的には一人の相手を想定して組み立てられてはいます。ですが一体複数でも対応できるようにある程度のバッファが設けられています。例えば、前後を同時に攻撃するような動作がそれです。

これは前だけでなく周囲全体に意識を置くための訓練として重要なものですが、相手が正面だけにいるのであれば不要な概念であり、これを意識して練習することは一対一のみの技術に集中し練習に取り組む場合と比べて時間と投下労力が分散してしまいます。

その結果、同じ運動神経、体格、年齢、体調、練習時間、投下労力が同じ二つの母集団を作り、一方が中国武術だけを練った場合、もう一方が一対一の技術のみを練習した場合、中国武術のほうが不利な状況が発生する可能性があります。

私はこの実験を実際には行ったことがなく、実証はしない主義なので今後も行うことはありませんが、推定される予測としてはあり得ると考えます。

武器操作に縛られている

中国武術の動作の原理は武器の操作法に由来します。私がここで解説している中国武術とは黄河流域の武術、いわゆる北派武術であり、南方の武術を含まない概念です。

北派武術は刀や槍などの武器操法の身法を徒手に転嫁したものであり、徒手武術でありながら武器とシームレスにつながった技術体系を持ちます。

双刀や双剣他などの一部例外をのぞけば、武器は一本で扱うものです。その場合、左右の動作には差異が生まれますし重心配分や動作の意味も左右で異なります。

刀や剣、槍でさえも主要な操作は利き手である右手を介して行います(手で操作するものではなく体で操作する物です)。

中国武術は様々な武器を取り扱う際にも一種類の技術的土台を利用すればよいため、器用な部分がありますが、その反面、徒手技術を専門に練習したい方にとっては、この武器術を徒手に転嫁した部分が足を引っ張ることがあります。

つまり、時間配分、労力の配分、技術の配分を徒手対徒手に集中するべきところで、武器を介在しなければ理解できないものが現れ、それが徒手への集中対応を妨げるということです。

ですから素手対素手に特化した戦闘技術を習得した場合、中国北派武術は最高の選択肢ではなくなるということを意味します。

中華文明を引きずる

現代に伝承されている中国武術は悠久の中華文明の歴史の中で長い年月を経て培われて来たといいたいところですが、実際には昔の文献などを参照してもなかなか現代にいたるまで伝承されているものとの直接的な関連性を証明することは難しいというのが現実です。

ですが、中国伝統武術は中国の伝統的な概念の上に成立したことは間違いなく、それゆえ中華文明を引きずっているとも言えます。中国人の哲学、論理、思想、美学が中国武術には内包されています。

別の視点でみるとそれは中華文明に引きずられた価値観を持っているとも言えます。中国武術を格闘術、殺人術、技撃の技術として純粋合理的に考え追及するのであれば、この中華文明の価値観は、格闘術としての足を引っ張るものと思われます。

陰陽、五行、動物の勢を借用した表現、気、功などの概念は純然たる格闘術には必須ではないからです。

寝技、組み技が見劣りする

中国武術は打踢摔拿という打つ、蹴る、投げる、極めるという技術が統合されたパッケージですが、それでも主要な技術は打と踢の比率が高い体系を持っています。

地功拳という門派もありますが、これを長拳の派生として例外とすると、寝技と組み技は現代格闘技に対して大きく見劣りすることは否めません。

寝技、組み技に特化しない理由としては、一対一のみを想定しない、地面が衛生的ではない、機動性に欠ける、武器を持つことが前提、等々があります。

防御耐性が低い

中国武術の弱点の一つとして挙げられるのは、直接的な打撃に対する防御耐性の弱さです。
直接打撃を行う格闘技や武道では打たれることを前提にして、その耐性を高めるための筋力トレーニングを行ったりします。

中国武術でも防御耐性を上げるための功法は存在しますが、対人練習を多く行う種類のものと比較して防御耐性への訓練をおろそかにしています。

ルールの違いなどいくつかの理由が考えられますが、他のものと比較した場合相対的に防御耐性が低いことは事実であると考えます。

外国人には難解

中国武術は黄河やその支流を中心とする黄河流域を中心とする地域で育まれた環境をもとに成立したものです。よってその環境背景、文化的な背景を持たない外国人にとって、理解が難解なものとなります。

例えば、漢語、陰陽や五行、三才、四象などの思想、気の概念、美的意識、地理的、気候的要因による技術体系などがあげられます。ただし、外国人であっても、後天的にこれらの背景を学習し、それを吸収することにより認識を行えば中国武術は難解ではなくなります。

体の硬い人は苦労する

中国武術の姿勢や動作が、練習者対して求める柔軟性の程度は相当なものです。前屈だけでは測れない全身のしなやかさが求められます。柔軟性の特性はそれぞれ異なっており、体の可動域が狭い人も広い人もいます。

体の可動域が狭い人は、まず一連の基本的な動作ができるようになるまでじっくり柔軟体操を行う必要があり、これはなかなかつらいものです。私も完全にはできない動作がたくさんあります。

中国武術の姿勢や動作には、十分な柔軟性を備えていることが前提で成立するものがたくさん含まれています。中国武術学習者はまずは体が要求に耐えられるように柔軟性を高める必要があります。時間がかかり、とてもつらいものになります。でもこの過程は必要です。

理論理屈が多い

中国武術は技術を体系化するうえで技撃性に加えて理論、術理を構築しています。この理には陰陽、五行などの中華文明独特の概念が含まれており、外国人にとってはなじみのないものが含まれています。

理論を構築することにより伝承を行いやすくするとともに、教養ある階層にも受け入れられる素地が出来上がったとも言えますが技撃や実用性のみを追い求め、体系化や伝承、誤解なく広く普及させることを重んじなければ不要のものとなります。

 

中国武術の弱点を解決する方法

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ここまで中国武術の弱点を解説してきましたが、ここではそれらを解決、克服する方法を紹介します。中国武術の弱点を克服する方法は以下の通りです。

そもそも中国武術を選択しない

これは中国武術の弱点を解決する方法ではありませんが、中国武術の弱点を好ましく思わないのであれば、まずは練習対象として中国武術を選択しない、というやり方があります。

中国武術に限らず、武術や武道、格闘技には優れたところと弱みがあり、そして練習しようとする方は何をやるかを自由に決めることができます。中国武術の弱点を良しとしないのであればまずは中国武術というテーマを選択しない、という選択肢を提案します。

中華文明を吸収する

中国武術が難しいと感じる理由には、「中華文明への理解が不足している」が上げられます。これは中華文明を理解し、中国人の思考、生活習慣、言語を吸収すれば解決できます。
中国人と同じ文化背景、思考方式、生活習慣を身に着けるようにしましょう。そうすれば中国武術は難しいものではなくなります。

中国人と同じ言葉を話し、中国人と同じ生活スタイルで中国人と同じものを食べることから始めましょう。

違うものを併用して補う

中国武術の弱点を認識しさらにその弱点を補っていこうとするのであれば、中国武術ではないものを併修するという対応策があります。これによって中国武術が苦手とする部分を補うことができます。

ただし、「放鬆」を基本とする中国武術に対して「体を締める」ことを基本とするものをやれば相互が衝突し、相乗効果が見込めなくなります。かといって中国武術の概念とあまりにも似たものを併修してもシナジーを得ることが難しくなります。

また、併修することは時間と労力が多くかかるということを意味します。労力と時間をたくさん投入するか、それらを分散することになり双方が中途半端になってしまう恐れもあります。

中国武術の弱点についてのまとめ

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今回は中国武術の弱点について紹介しました。世の中にはいろいろな武術、武道、格闘技などがありますが、それぞれすべてに優れたところ、弱みというものがあります。

普段は自分が練習しているものの強みや優れたところに目線をフォーカスしがちですが、良く学びそれを深く理解しようとするのであれば、弱み、弱点を客観的に分析し認識しておくことは悪いことではないと考えています。

技術体系にある弱みというものは工夫によって多少は補うことができます。今回は弱点を補う方法も紹介していますので各自で工夫してそれをカバーする方法を見つけ出してください。

もしこのブログをみて中国武術の弱みを認識し、中国武術に興味がなくなる方がいれば、それはそれでいいと思います。おそらくその要は方は数あるものの中から中国武術を選ばないほうがいいと思います。

世の中には自分に合ったものがたくさんあります。いろいろなものを見て、比較し検討し、自分がこれだと思うものを見つけ出し時間と手間をかけて練習してみてください。

このブログが中国武術の研究の助けになれば幸いです。

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