中国武術

中国武術上達のコツ ~中華文明の教養を身に着ける~

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中国武術を学び、これを大成させようと努力し、表現する、そして中国人の動作と比較してみた際何か違いを感じることはありませんか?これはひょっとすると、中華文明の教養の深さの違いによるものかもしれません。

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本日は、中華文明の教養について解説します。

中華文明の教養いろいろ

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中華文明の教養には様々なものがあります。以下にそれを解説します。

古典

日本人が小さいときから親しんだ浦島太郎、舌切り雀、おむすびころりん、これらを同じ感じで四書五経に親しんだり、戦国策や中国の歴史物語に親しみましょう。

戦国策は日本では漢文でごく一部を学ぶだけですが、権謀術数、話術、巧みな例え、鮮やかな説得などを学ぶのに最適な教材です。同じく一般的に知られている故事成語に精通することも必要です。

それは中国人は温故知新として、古きから新しい知恵を学ぶことに重きを置いており、教養がある階層は英語で言うスラングのように、故事成語から多くを引用します。例えば「Baiwen buru yijian」と言う音を聞いて「百聞不如一見」→「百聞は一見に如かずだね」と言う具合にすぐに理解できる必要があります。

士大夫精神与中国文化

季節のイベント

中華文明を理解するには中華民族の季節のイベントも理解しましょう。例えば、

  • 春節:年越しを祝うおめでたいイベントです。除夕には年夜飯のご馳走を食べます。
  • 元宵節:新年最初の満月を愉しみます。ランタンをともし、湯圓(タンユエン)を食べます。
  • 清明節:先祖の墓参りをする日です。
  • 端午節:「屈原」の供養祭として始まったもので、粽を食べてドラゴンボートレースをします。
  • 七夕節:中国では「情人節」(恋人の日)とも呼ばれています。
  • 中秋節等:月見しながら月餅やブンタン(文旦)を食べます。

面子

中国人は面子を重んじるという話を聞いたことがある方も多いと思います。そしてこれは事実です。中国人は面子を非常に重視します。日本では謙遜は美徳ですが、中国人は自分を自ら蔑むようなことは行いません。金銭が許す限り見栄を張ります。ブランドものや学歴や肩書の権威にもこだわります。

ですから自分の仲間や家族を自ら蔑むような発言もめったにしません。他人に恥をかかせないという配慮を見せる反面自分の面子を潰そうとする人間の事は絶対に許しません。

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家族観

中国人は家族のつながりを大事にします。日本では都会にでた核家族は正月でもない限り頻繁に実家と行き来をしない方もいますが中国人は結婚しても家族との繫がりを大事にし、結構な頻度で実家に帰り食事をしたりします。例えば母の日や父の日、ことあるごとに家族で集まり週末にレストランで食事したりします。

親戚づきあいに慣れていない日本の方が中華系の方と結婚した場合、この家族づきあいや親戚づきあいに疲れてしまうかもしれません。

結婚した後も旦那はことあるごとに実家の母親と連絡を取り、実家と行き来をしますがこれはマザコンでも何でもなく普通の事です。ついでに申し上げると「結婚して何年目だったっけ」、「孫の顔はいつ見れるのか」というプライベートな話がでるのも普通の事です。

義兄弟、義理の息子、娘

日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、中国人は義兄弟の契り、義理の息子、娘を迎えるという習慣があります。乾児子、乾女児等と言い、法律上の養子縁組は行いませんが、自分の子供同様である、という風に考え援助をしたりします。

日常会話で「他是我哥,他是我妹」という具合にいう場合があり、それが血のつながった本当の兄弟なのか、または義理の兄弟姉妹なのかなかなか区別がつかないことがありますが、注意深く話を聞いているとわかります。

乾児子、乾女児や兄弟分というのは中国武術の世界でもあります。劉備、関羽、張飛が桃園の誓いで義兄弟の契りを結んだように武術の世界でも〇〇を兄、〇〇を弟とし兄弟の契りを結ぶ、と言う習慣は残っています。

おそらく鏢局のビジネスも結拜兄弟のシステムを上手く活用し、相互に利益を確保していたと推測できます。第二次世界大戦以前に東北部で跋扈した馬賊もこの義兄弟の契りで勢力を築き、また均衡を保っていました。満州国総理の張景恵と奉天軍閥の張作霖は義兄弟です。

またこれは武術や馬賊だけではなく、青幇等の組織でも行なわれる普遍的な価値観です。国民政府の幹部や将校にも青幇の構成員がたくさんいます。私の武術の系譜に関連する先輩にも青幇の関係者はいます。

お土産・プレゼント

日本人も誰かを訪問したりイベントがあるときにはお土産やプレゼントを渡すでしょう。でも「つまらないものですが」といいながら自分がちょうどいいと思う程度のものを持っていく場合が多いですね。

中国人に「つまらないものですが」といいながらお土産を渡すのは非常に失礼なことになります。つまらないものを持ってきた人までつまらないものとみなされてしまいます。

お土産やプレゼントには面子かかかっています。とっておき物を用意しプレゼントするようにして下さい。ブランド物のバックやプレミアのついたウイスキー、そういうものが喜ばれます。

学歴

中国人にとって重要なことは面子のほかに学歴があります。学歴は自分の教養を示すステータスです。スポーツの成績が優秀でも何の自慢にもなりませんが、中国では、親は「子供は健康でまっとうに育ってくれたらいい」とは思っていません。

高卒より大卒、大卒より大学院卒でなおかつ名門の大学を卒業して学歴の箔をつけてほしいと思っています。子弟がそこには入れる教育環境を作ったことは両親にとっても誇りであり面子が立つからです。

収入と金銭感覚

中国人は金銭感覚に鋭敏です。そして収入や金が生活を豊かにするために必要なものであるという現実を認識して生きています。そしてビジネスで成功している人を称賛し、資産が多い人を成功者として褒めたたえます。

資産が築けない人は才覚がないとして軽蔑されます。ですから、中国人の前では、貧乏自慢は絶対にやめたほうがいいです。「俺、お金がないから」とかそういうことは冗談でもいうのはやめた方がいいです。普通に軽蔑の対象になります。

「貧乏な私はどうしたらいいんですか」と思う方がいるかもしれませんが、それに対する解決方法は用意されています。自助努力と自己責任により能力を磨き、お金を稼ぎそれにより資産を築いて貧乏から脱却することです。

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おもてなし

日本の学生(練習生の事を学生といいます)で、中国の老師の自宅で食事をごちそうになったことがある方もいるかもしれませんが、中国では食べきれないほどの料理をごちそうするのがおもてなしです。食べ残しても問題ありません。食べきれるだけの料理しか提供できないのはみみっちいい行いだからです。これは面子に関わる問題でもあります。

食べ物

中国人は冷たいものを食べません。中国人は「熱食」です。日本人は冷たいものを食べますね。刺身とか、冷たい弁当とか「冷食」です。

中国人が日本に観光にきて、なかなか手が付けられないのが、「冷めたお弁当」です。「おいしそうなんだけど、冷たいのはちょっと。」衛生観念が発達する前の時代、料理してから間もないものを食べることがおなかを壊すリスクを下げる方法の一つでした。もちろん中国にも肉の膾(ナマス)や生の淡水魚を薬味と一緒に食べる食文化があったことは事実です。

北方人は肉と麺食、南方は米や魚の料理を食べたりと北方と南方では食文化が違ったりします。

割勘

中国人は食事の際に割勘をすることはとてもみみっちいことだ感じます。大の大人が割勘をするのは器の狭い人間のように感じます。これには面子の問題も絡んでいます。

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中華文明の教養を身に着けることのまとめ

竹の扇子竹の扇子

本日は中華文明、中国人の習慣の一端を紹介しました。中国武術の本質は技撃です。攻撃を受けて反撃をするというのは簡単にできますが、中国武術特有の理論や力やイメージの運用をするにあたり受けたり打ったりだけの練習をしているだけでは限界が来ます。

アメリカでベトナム人の兄ちゃんが握るカリフォルニアロールを悪いとは言いませんが、京都の老舗の料亭の割烹の料理人はそれを心から認めることはないでしょう。

中国武術も同じことが言えます。中国の価値観や概念、教養を理解し、吸収し、自分もその一部になることで中国武術への理解はより深まります。もし中国武術でなにか行き詰まりを感じている方、さらに高みを目指したいと考える方は一度ぜひ中国人の感性と同化することを試みてみてください。きっと何かが変わるはずです。

本日のブログが皆様の中国武術研鑽の参考になれば幸いです。

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