世の中には色々な武道、武術があります。なかには、練習中に大声を上げる武術や武道があるそうです。中国北派にはそのような習慣はないので私も大きな声を上げることはありません。
大きな声を出したりすることは個人的にはあんまり意味がないと思っています。今日は武術上達に気合や掛け声が必要かについて解説します。
気合とは?掛け声とは?
中国北派武術では、「気 chi」という概念を考え、運用し、使用しますが、「気合」という言葉は聞いたこともないため、その定義がよくわかりません。ですから掛け声との違いも良くわからないというのが実情です。掛け声は、「大きな声をだす」ということでしょうか。
大声を出すデメリット
中国北派武術の練習では大声を出すことはありませんが、南方系の武術で大きな声を出しているのを見たことがあります。中国北派武術として大声を出すことのデメリットを解説します。武術武道にはいろいろな門派があり、考え方もいろいろです。今回は中国北派武術についてのみ論じることにさせて頂きます。
やかましい。近所迷惑になる
大声を出すとやかましく、近所迷惑になります。中国の伝統的な崇高な時間の過ごし方である、主静を重んじ、筆と箸より重い物を持たず、袖の長い服を着て、文房でそれを汚さないように過ごし、教養を高めるために読書をしている人たちの邪魔になります。
自然呼吸ができない
中国北派武術では自然呼吸を重視します。自然呼吸とはただ日常生活でリラックスした状態の呼吸だけに及ばず、武術の中で能動的に作られた呼吸法も含めて自然呼吸の概念に含みます。大声を出すということは、故意に吐く呼吸に付けたしをしていることになります。
呼吸は吐くことに偏ってしまい、呼吸の均衡が崩れます。声を出さずに静かに吸うことと吐くことを反復した方が良いと思います。
無駄に疲労する
声を出すことは、無駄に腹筋や横隔膜を使い、疲労を招きます。掛け声を出すには、大きな呼吸が必要で、吐く時間も長くなったりします。上記と同じく自然呼吸から乖離します。また大きな声を出すために、空気を吸うタイミングがずれれば呼吸が乱れ、息切れの原因となります。
ダチョウ倶楽部のように「ヤーー」とか、そのような音声を発音する時間があるなら、一定のリズムで体の動きに合わせて空気を「吸う」と「吐く」を繰り返した方が良いのではと思います。
任脈と督脈のスイッチを切断させてしまう
これは現代科学では未だに説明できない疑似科学と言えるものですが、中国の生理的考え方には体の正中線を一周廻る「小周天」という概念があります(概念、があるんです)。体の前を通っているのが任脈、背中側を通っているのが督脈です。
任脈と督脈を結ぶスイッチは、前歯の裏側の付け根にあり、ここに舌先が触れることによって、任脈と督脈が結線される、という概念です。(概念です)、口をあけて音声を発生させる行為は、このスイッチを切断させてしまうことになり、中国の伝統的な生理的考え方から矛盾を引き起こします。
舌を噛みやすい
全身に力がこもる一番大事にな瞬間に、舌の形状を変えて発生することは、舌を噛む原因となります。危険な行為です。
掛け声を出すメリット
掛け声を出すメリットは、集団で何かをするときに整合性が取りやすいということぐらいでしょうか。あとは、大声を出したら相手が一瞬音声にビックリするということがあるかもしれません。気合という概念を理解する予定がない以上、メリットとしては現状これ以上語ることはできません。申し訳ないですが。
まとめ
今回は、気合と掛け声の必要性について考えてみました。声を張り上げることと、所謂「氣」について関連性は特にありません。掛け声について、中国北派武術に於いても全くないわけではなく、発力の瞬間に鼻から「ンムッ」という音声が出たり、「ハンッ」という音が出ることがあります。
私は現在、呼吸と動きの配合の精度を高める練習の段階ですが、将来は、呼吸と動きを連動させなくても、整った動きができるようにしたいと思います。「3回呼吸するうちに7回撃って、5歩動き、そしてバラバラのまま全体に整合性がとれ、矛盾を秘めたまま矛盾なく動き、それらが協調している」というのが次の段階かなと想像中です。
声を出すのが好きな方もいらっしゃいますし、好まない方もいます。いいのか悪いのかは
それぞれの武道によって考え方が違います。日本人の「かけごえ」についての着眼点はなかなか面白いと思います。