中国武術

中国武術における偶像崇拝の弊害。客観性を持って研究・評価する

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中国武術に限らず、無形文化的なものの継承には、始祖の神格化、遺影等人造物への敬礼を要求をさせるところもあると聞いたことがあります。

私はこれらの人物に対する神格化、物質への偶像崇拝については否定的な意見を持っています。本日は無形文化における偶像崇拝の弊害等について解説します。

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偶像崇拝のデメリット

不動明王の石像不動明王の石像

始祖を神格化したり、遺影、偶像などの物質に対し敬礼をさせるような偶像崇拝についてデメリットを以下に述べます。

根拠に欠ける自負心を煽る

偶像崇拝的行為は、技術的根拠、証拠があればよいですが、「開祖が有名だから」「系譜に正当性があるから」等の、根拠に欠ける自負心を学生に与える可能性があります。

価値観そのものを歪め、客観的な目線を失わせる。

自分が学んでいる門派、系譜を崇拝するあまり、本来目指すべき「中国武術」としての高みを目指すための客観、公平、公正な目線で分析、評価する感覚を失います。

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偶像崇拝の対象となる人物の人間関係、嗜好に影響される。

偶像崇拝すれば、対象となる人物が過去に引き起こした禍根、人間関係、嗜好に対し影響を受けることがあります。中国武術を含む無形文化は人間が人間に継承した技術、哲学そのものこそに意味があり、人物自身の嗜好について引きずるべきではありません。

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技術、哲学性を客観的に俯瞰し、その中で高みをめざし完成させようという道のりから考えれば、悪弊が発生します。

偶像崇拝的行為のメリット

石窟の仏像石窟の仏像

偶像崇拝にはデメリットだけが存在するものではありません。偶像崇拝的行為のメリットにも言及します。偶像崇拝的行為のメリットは、時として

  • 集団の結束力を高める効果を持つ

ことです。また技術、または思想、哲学性、芸術性と言った目に見えない無形のものの価値を想像することが難しい、ある種その、こういう言い方は賛否両論はありますが、幼稚なレベルの人にも、わかりやすく何かを示せる可能性があります。

まとめ

仏をかたどる偶像仏をかたどる偶像

老師を尊敬すること、尊重すること、畏敬の念を持つこと、または技術、思想、哲学、教えについて誇りを持つことと、老師や始祖の遺影、写真、像などへの人工物に対し偶像崇拝をすることは似て非なるものです。

孔子の言行を弟子たちがまとめた「論語」でも

「敬鬼神而遠之」(鬼神を敬してこれを遠ざく)

とし、人間はあくまで人間の次元において判断し、行動するべきであり、鬼神には尊崇の念をもちながらも、あくまで人間を超えた存在として扱うこと、として偶像崇拝を戒めています。

中国武術は本来は、能や狂言と同じく、物質的なものでは無く、無形文化財のような内容です。偶像崇拝は、本来向上させるべき、技術、精神、思想への認知を歪め、技術や認識の向上を妨げます。

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また、自分の系譜、始祖、老師を崇拝の対象としてしまうことは、本来行うべきである「中国武術」という全体の概念に対するの研究と理解を深める、という行為に対する冒とくとも言えます。またこれを行えば、自派の優越性への執着性が生まれ、これに固着し、全体理解に対する弊害をもたらします。

 

中国武術の技術的向上、理解の深度化、発展への貢献のためには、客観的、公正、公平な目線で、比較、研究、評価することが欠かせない要素です。

自分の練習している技術体系、系譜対してさえ俯瞰する勇気を持ち、真摯に研究を行いましょう。

また、これらを論じることは繊細な感情的問題を引き起こすることも、可能性として有り得ます。誠実で紳士的な姿勢を以て、深みを目指す意思を貫いていきましょう。

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